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健康コラム

冬に息切れが悪くなるCOPD ― 「増悪」を防ぐ2つの飲み薬を比べた研究

日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。

「冬になると、毎年のように息切れがひどくなるんです」

「かぜをひくたびに痰が増えて、なかなか治りません」

「調子のいい日は、吸入薬をつい忘れてしまいます」

こんな経験はありませんか。
COPD(慢性閉塞性肺疾患:まんせいへいそくせいはいしっかん)は、たばこの煙などで肺が傷み、息切れが続く病気です。
COPDの方は、冬に症状が急に悪くなる「増悪(ぞうあく)」を起こしやすくなります。
11月18日は「世界COPDデー」です。
今回は、増悪を防ぐ飲み薬を比べた海外の研究と、毎日できる備えをご紹介します。

冬に息切れが悪くなるCOPD ― 「増悪」を防ぐ2つの飲み薬を比べた研究 記事のポイント図解

COPDの「増悪」とは?

増悪とは、息切れや咳・痰がふだんより悪くなり、治療を変える必要がある状態のことです。
痰が増えたり、黄色や緑色に変わったりして始まることもあります。
ゆっくり進むこともあり、ただのかぜと思って見逃されることもあります。

増悪が起こると生活の質が下がり、肺の働きが年々落ちるのも早まります。
回復には通常4〜6週間かかり、元に戻らないこともあります。
心筋梗塞や脳卒中なども起こりやすくなります。
前の年の増悪が、次の増悪の最も大きなリスクとされています(COPDガイドライン第7版)。

関連記事:その息切れ、肺からのサインかもしれません ― 40歳からのCOPDセルフチェック


なぜ冬に増えるの?

増悪のきっかけで多いのは、かぜやインフルエンザなどの気道の感染です。
冬は感染症が流行しやすく、冷たく乾いた空気も気道を刺激します。

世界各地のCOPDの方を追った大規模な研究では、北半球でも南半球でも、冬の月に増悪が約2倍に増えていました(Eur Respir J、2012年)。

かぜが肺炎に進むこともあり、冬の体調の変化には注意が必要です。

関連記事:かぜのつもりが肺炎 ― 診察とレントゲンだけでは分からないことがあります


増悪を防ぐ2つの飲み薬を比べた研究

COPDの治療の中心は、毎日の吸入薬です。
それでも増悪をくり返す方には、飲み薬を足す方法が、国内外の指針で示されています。

代表的なのが次の2つです。

・アジスロマイシン:抗菌薬の一種(マクロライド系)を、増悪予防のために長く飲む方法
・ロフルミラスト:気道の炎症をおさえる飲み薬

どちらも増悪を減らすと示されていましたが、直接比べた試験はありませんでした。

2026年8月、この2つを比べた研究が、英国の医学誌「BMJ」に発表されました。
米国の保険データ(2011〜2024年)で、どちらかを新しく始めた40歳以上の方を調べました。
年齢や病状などの条件をそろえた7,550組(平均70歳)を比べました。
ここでの増悪は、抗菌薬やステロイドの飲み薬、または入院が必要になったものです。

その結果、最初の増悪が起こるリスクは、アジスロマイシンのほうが17%低くなっていました。


この研究を読むときの注意点

この研究は、実際の診療の記録を使い、試験に近い形で比べたものです。
くじ引きで薬を決める試験(ランダム化比較試験)ではありません。
そのため、ほかの条件が結果に影響した可能性は残ります。
現在、2つの薬をくじ引きで比べる大規模な試験も進んでいます。

また、この研究では副作用を比べていません。
アジスロマイシンでは、聴力の低下や心電図の変化、菌が薬に強くなる「耐性菌」などの心配があります。
ロフルミラストでは、下痢や体重減少などが知られています。

ロフルミラスト(海外での商品名:Daxas、Daliresp)は、海外では、増悪をくり返す重いCOPDの方の飲み薬として承認されています(欧州2010年、米国2011年)。
ただし、現時点で日本国内では承認されておらず、使うことはできません。
アジスロマイシンも、COPDの増悪を防ぐ薬としては承認されていません。
国内の指針でも、マクロライド系の抗菌薬はCOPDに保険適用がないとされています。
この記事は研究の紹介であり、特定の薬をおすすめするものではありません。
お手元の抗菌薬を、自己判断で飲み続けることはおやめください。


冬に増悪を起こさないために

研究で比べた飲み薬は、毎日の治療を続けても増悪をくり返す方のためのものです。
まずは、次の5つを見直してみてください。

・吸入薬を毎日続ける:調子のよい日もやめないことが、増悪を防ぐ土台になります
・吸入のしかたを確かめる:吸う速さや息止めが、自己流になっていることがあります
・ワクチンで感染に備える:増悪のきっかけで最も多い、気道の感染を防ぎます
・禁煙する:加熱式・電子タバコも含めてやめると、増悪が減ると分かっています
・「いつもと違う」に早く気づく:息切れや痰の量・色、体温などを日誌につけておきます

ロンドンの研究では、増悪の約4割が医師に伝えられていませんでした。
早く治療を始めた人ほど回復が早く、伝えなかった人ほど救急での入院が多い傾向でした(Am J Respir Crit Care Med、2004年)。


COPDの方に勧められているワクチン

COPDのガイドライン(第7版)では、次のワクチンが勧められています(制度は2026年10月時点)。

・インフルエンザ:毎年の接種が基本です(65歳以上の方などは定期接種)
・肺炎球菌:65歳の方などの定期接種が、2026年4月から新しいワクチンになりました
・新型コロナ:65歳以上の方などの定期接種が、2026年10月から始まっています
・RSウイルス:60歳以上の方などが任意で受けられます(50歳以上で重症化のリスクが高い方の他、妊婦向けワクチンもあり)
・帯状疱疹:50歳以上のCOPDの方に勧められています

関連記事:インフルエンザワクチン、今年はどう考える? ― 大人・子ども・高齢者と次世代ワクチン
関連記事:高齢者肺炎球菌ワクチンが「プレベナー20」へ健康を守るための新しい予防接種
関連記事:成人のRSウィルス(RSV)感染症とワクチン完全版―高齢者・基礎疾患のある方の“重症化予防”をどう考えるか―


「いつもの息切れ」と思い込まないでほしい症状

次のような症状があるときは、早めにご相談ください。

  • 安静にしていても、息が苦しい
  • 息苦しさで、話すことや横になることがつらい
  • 唇や指先が、紫色っぽくなっている
  • ふだんの発作止めの吸入を使っても、楽にならない
  • 高い熱が出ている、胸が痛い
  • 意識がぼんやりする、いつもより強い眠気がある

急に強い息苦しさが出たときや、意識がはっきりしないときは、迷わず救急車を呼んでください。


こんな症状はありませんか?

  • 冬になると、息切れや咳・痰が悪くなりやすい
  • かぜをひくと、なかなか治らない
  • この1年で、息切れが悪化して薬が増えたことがある
  • 調子のよい日は、吸入薬をつい忘れてしまう
  • 吸入のしかたを、しばらく見てもらっていない
  • 今シーズンのワクチンを、まだ接種していない

当てはまる項目がある方は、冬が本格化する前に一度ご相談ください。


当院でできること

呼吸器を専門とする医師が、COPDの診断から冬の備えまでご相談をお受けしています。

診断や経過の確認には、呼吸機能検査(息を吐く力や量を調べる検査)を行います。

胸部CT(低線量CTにも対応)では、専用の解析ソフトで肺気腫の程度を数値で評価します。
結果は、異常なし・軽症・中等症・重症の4段階で判定できます。
保険診療で行う胸部CTの中で評価するため、追加の料金はかかりません。

肺気腫の解析画像の例。肺の低吸収領域を色分けして表示している
肺気腫の解析画像の例(肺の低吸収領域を色分けして表示)

このほか、次のことに対応しています。

・吸入薬の使い方の確認(吸入指導)
・インフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナ、RSウイルス、帯状疱疹の予防接種
・禁煙外来(製剤の供給不足により、連携施設へ紹介する場合があります。)
・増悪したときの、ネブライザー吸入(霧状にした薬を吸う治療)や点滴
・在宅酸素療法(ご自宅で酸素を吸う治療)の導入と管理
・入院が必要なときの、連携する病院へのご紹介

関連記事:肺がん検診、「異常なし」1回で終わりにしていませんか? ― 喫煙歴のある方の低線量CT
診療案内:CTスキャン
診療案内:呼吸器疾患


まとめ

COPDの「増悪」は冬に増えやすく、くり返すと肺の働きや体力に影響します。
海外の研究では、アジスロマイシンのほうが増悪が少ない傾向でしたが、国内では承認の状況が異なります。
毎日の吸入、ワクチン、禁煙、そして「いつもと違う」に早く気づくことが、冬の備えの基本です。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断や治療方針を示すものではありません。内容は掲載時点の情報にもとづいています。症状のあらわれ方や、検査・治療の必要性は患者さんごとに異なります。記事で紹介した研究の薬剤には、国内で未承認のものや、COPDの増悪予防には承認されていないものが含まれます。記載した検査や予防接種には医師の診察が必要で、費用は診療内容によって異なります。ご不明な点は当院(電話 092-791-3985)までお問い合わせください。


今回の記事の根拠

・Portela GT, et al. Comparative effectiveness of azithromycin versus roflumilast in patients with chronic obstructive pulmonary disease: emulated target trial. BMJ. 2026;394:e100111.(https://doi.org/10.1136/bmj-2026-100111)
・Albert RK, et al. Azithromycin for prevention of exacerbations of COPD. N Engl J Med. 2011;365(8):689-698.(https://doi.org/10.1056/NEJMoa1104623)
・Janjua S, et al. Phosphodiesterase-4 inhibitors for chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2020;5:CD002309.(https://doi.org/10.1002/14651858.CD002309.pub6)
・Jenkins CR, et al. Seasonality and determinants of moderate and severe COPD exacerbations in the TORCH study. Eur Respir J. 2012;39(1):38-45.(https://doi.org/10.1183/09031936.00194610)
・Wilkinson TMA, et al. Early therapy improves outcomes of exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med. 2004;169(12):1298-1303.(https://doi.org/10.1164/rccm.200310-1443OC)
・日本呼吸器学会 COPDガイドライン第7版作成委員会 編『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第7版 2026』(2026年3月)
・厚生労働省 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 資料(2026年2月12日)
・日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会「成人のRSウイルスワクチンに関する見解」(2025年12月9日)
・日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会「2026年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解」(2026年9月1日)


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以上、【冬に息切れが悪くなるCOPD ― 「増悪」を防ぐ2つの飲み薬を比べた研究】でした。
『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。

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