日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。
「毎年打っているけど、正直どれくらい効いているんですか?」
「子どもが注射を怖がるので、鼻のワクチンが気になっています」
「親が75歳です。高齢者向けの新しいワクチンは打てますか?」
こんな疑問をお持ちではありませんか?
10月に入り、今年もインフルエンザワクチンの季節になりました。
福岡県では9月中旬の時点で、インフルエンザの報告がすでに増え始めています。
(福岡県感染症発生動向調査週報、令和8年第38週)
今年はワクチンをめぐって、新しい動きもいくつかあります。
今回は、大人・お子さん・高齢の方それぞれのポイントと、
世界で進む次の世代のワクチンについてまとめました。

ワクチンで、何がどれくらい防げるのか
まず、正直な数字からお伝えします。
健康な大人を対象にした研究をまとめた報告では、
注射のワクチンで、検査で確かめられたインフルエンザが
2.3%から0.9%に減ったとされています。
およそ6割減った計算です。
(Cochraneレビュー、2018年)
つまり、ワクチンは「かからない」を約束するものではありません。
それでも、かかる人を減らすことが示されています。
さらに国は、発病をある程度抑える効果に加えて、
肺炎や脳症などの重症化を防ぐ効果も認められている、としています。
特に持病のある方や高齢の方で、その効果が期待されます。
(厚生労働省「インフルエンザQ&A」)
効果が出始めるのは接種から2週間ほど後で、およそ5か月続くとされています。
流行するウイルスの型が毎年変わるため、毎年の接種が勧められています。
働く世代の大人は「注射」のワクチンです
13歳以上の方は、原則1回の接種です。
「鼻のワクチンを大人も使えないの?」というご質問をよくいただきます。
日本では、鼻からのワクチンは2〜18歳が対象で、大人は使えません。
理由のひとつは、大人では効果が下がることです。
アメリカで18〜49歳を対象に行われた比較試験では、
注射のワクチンの有効率が68%だったのに対し、
鼻からのワクチンは36%でした。
(Monto ほか、New England Journal of Medicine、2009年)
大人はこれまでに何度もインフルエンザに触れているため、
鼻の粘膜の免疫が、弱めたワクチンのウイルスを
すぐに追い出してしまうためと考えられています。
大人のインフルエンザ予防は、今も注射のワクチンが基本です。
お子さんは「注射」か「鼻から」を選べます
2〜18歳のお子さんは、注射のほかに、
鼻に噴霧するワクチン(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)を選べます。
日本では2024年秋から使われています。
針を使わず、シーズン中1回で済むのが特徴です。
13歳未満の注射は2回必要なので、通院の回数も減ります。
日本の2〜18歳を対象にした試験では、インフルエンザにかかった割合が
鼻のワクチンで25.5%、偽薬(プラセボ)で35.9%。
約3割(28.8%)少なかったと報告されています。
(中野貴司、小児耳鼻咽喉科、2025年)
接種後には、鼻水・鼻づまりが59.2%(偽薬では52.6%)、
38℃以上の発熱が5.9%(偽薬では3.0%)にみられています。
また、接種後1週間ほどは、インフルエンザの検査で
陽性と出ることがあります。受診の際はお伝えください。
次のような場合は、鼻のワクチンではなく注射をおすすめします。
・免疫の病気がある、または免疫を抑える治療を受けている
・妊娠している
・ご家族など身近に、重い免疫不全の方がいる
ゼラチンでアレルギーが出たことのある方、
飲んでいるお薬がある方も、接種前にお知らせください。
どちらが向いているかは、お子さんの年齢や体質によって変わります。
迷ったら、お気軽にご相談ください。
高齢のご家族へ ― 定期接種と「高用量ワクチン」
65歳以上の方は、公費の助成がある定期接種の対象です。
60〜64歳でも、心臓・腎臓・呼吸器などに重い障害のある方は対象になります。
高齢の方向けには、「高用量ワクチン」もあります。
ワクチンの成分を通常の4倍に増やし、腕の筋肉に注射するタイプです。
海外の65歳以上を対象にした大規模な試験では、
通常のワクチンよりインフルエンザが24.2%少なかったと報告されています。
(DiazGranados ほか、New England Journal of Medicine、2014年)
日本でも2024年12月に承認され、
今年10月から75歳以上の定期接種に加わる予定でした。
ところが製造上の理由で発売が延期され、
今シーズンの定期接種は、これまでと同じワクチンで行われます。
「新しいワクチンを打ちたい」とご家族に聞かれたら、
今シーズンはまだ使えない、とお伝えいただければと思います。
世界では、次の世代のワクチンが動き出しています
この項目で紹介するワクチンは、いずれも日本では承認されておらず、当院でも接種できません。
世界の研究の動きとして、お読みください。
mRNAワクチン
新型コロナで実用化された技術が、インフルエンザにも使われ始めました。
2026年8月、アメリカで50歳以上向けに初めて承認されています。
4万人を超える試験では、従来のワクチンと比べて、
インフルエンザにかかった人が26.6%少なかったと報告されています。
(New England Journal of Medicine、2026年)
別の会社の18〜64歳を対象にした試験でも、34.5%という結果でした。
(Fitz-Patrick ほか、New England Journal of Medicine、2025年)
ここで大切なのは、これが「従来のワクチンとの比較」だという点です。
「打てば26.6%防げる」ではなく、
「今のワクチンに上乗せして、さらに約4分の1減らせた」という意味です。
製造にかかる期間が短く、その年の流行に合わせやすいことが期待されています。
一方で、腕の痛みなどの反応は従来のワクチンより多く報告されています。
コロナとインフルエンザの混合ワクチン
1回の注射で両方を予防するワクチンが、2026年に欧州で承認されました。
卵を使わない作り方
今のワクチンの多くは、鶏の卵の中でウイルスを増やして作ります。
その過程でウイルスが少し変化し、流行の型とずれることがあります。
海外では、細胞や遺伝子組換えの技術で作るワクチンも使われています。
遺伝子組換えのワクチンでは、50歳以上で従来より30%少なかったと報告されています。
(Dunkle ほか、New England Journal of Medicine、2017年)
研究が進んでいるもの
ウイルスの変わりにくい部分を狙い、毎年打たなくても済むことを目指す「万能型」。
貼るだけで接種できる「貼るワクチン」。
いずれも、実用化にはまだ時間がかかる段階です。
数年後には、ワクチンの選び方が大きく変わっているかもしれません。
ただ、いま備えられるのは、今シーズンのワクチンです。
こんな方は、早めの接種をご検討ください
- 65歳以上の方
- 喘息やCOPDなど、肺の持病がある
- 糖尿病や心臓の病気がある
- 小さなお子さんや、高齢のご家族と暮らしている
- 受験や大事な仕事を控えている
- 人と接することの多いお仕事をしている
当てはまる方は、流行が本格化する前の接種をおすすめします。
接種の前にご相談いただきたい方
次に当てはまる方は、接種の前にお知らせください。
・接種当日に、37.5℃以上の熱がある
・過去にワクチンで、強いアレルギー(アナフィラキシー)が出たことがある
・妊娠中、または妊娠の可能性がある
・免疫を抑えるお薬を使っている
・ゼラチンや卵で、アレルギーが出たことがある
体調やお薬によって、接種の時期や種類を調整することがあります。
当院でできること
当院では、次のインフルエンザワクチンを接種いただけます。
・注射のワクチン(大人・お子さん)
・鼻から噴霧するワクチン(2〜18歳)
注射のワクチンでは、打った場所の赤み・腫れ・痛み、
発熱やだるさなどが出ることがあります。
多くは数日でおさまります。
喘息やCOPDなど肺の持病がある方には、
呼吸器の専門医が体調を確認したうえで接種を行います。
ご家族がインフルエンザにかかったときの、
予防のためのお薬についてもご相談いただけます。
「うちの子はどちらがいい?」「持病があっても大丈夫?」など、
どんなことでもお気軽にご相談ください。
まとめ
ワクチンは「かからない」を約束するものではありませんが、発病や重症化を減らす効果が認められています。
大人は注射、2〜18歳は注射か鼻からを選べます。高齢の方向けの高用量ワクチンは、今シーズンは見送りとなりました。
世界では次の世代のワクチンの研究が進んでいます。ただ、いまできる備えは今シーズンのワクチンです。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断や治療方針を示すものではありません。内容は掲載時点の情報にもとづいています。症状のあらわれ方や、検査・治療の必要性は患者さんごとに異なります。記載した検査や薬剤の使用には医師の診察が必要で、費用は診療内容によって異なります。ご不明な点は当院(電話 092-791-3985)までお問い合わせください。
今回の記事の根拠
- Demicheli V, et al. Vaccines for preventing influenza in healthy adults. Cochrane Database Syst Rev. 2018;2:CD001269.
- Monto AS, et al. Comparative efficacy of inactivated and live attenuated influenza vaccines. N Engl J Med. 2009;361:1260-7.
- 中野貴司「近年わが国で導入された新しいワクチンについて」小児耳鼻咽喉科 2025;46(2):69-76.
- DiazGranados CA, et al. Efficacy of high-dose versus standard-dose influenza vaccine in older adults. N Engl J Med. 2014;371:635-45.
- Dunkle LM, et al. Efficacy of recombinant influenza vaccine in adults 50 years of age or older. N Engl J Med. 2017;376:2427-36.
- Fitz-Patrick D, et al. Efficacy, Immunogenicity, and Safety of Modified mRNA Influenza Vaccine. N Engl J Med. 2025.
- Efficacy and Safety of an mRNA Seasonal Influenza Vaccine in Adults. N Engl J Med. 2026.
- 厚生労働省「インフルエンザQ&A」
- 福岡県「福岡県感染症発生動向調査感染症週報」令和8年第38週(令和8年9月28日公表)
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以上、【インフルエンザワクチン、今年はどう考える? ― 大人・子ども・高齢者と次世代ワクチン】でした。
『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。
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