日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。
「気づいたときには、もう痛みがピークなんです」
「心臓の持病があるので、片頭痛の薬は使えないと言われました」
「注射の予防治療をしていますが、たまに発作が出ます」
こんな経験はありませんか。
前回の記事では、片頭痛の発作を止める薬としてトリプタンをご紹介しました。
ここ数年で、トリプタンとはまったく違う仕組みの飲み薬が2つ加わっています。
ラスミジタン(レイボー)と、リメゲパント(ナルティーク)です。
これまで「使える薬がない」と言われてきた方にも、選択肢が広がりました。今回はこの2剤についてお伝えします。

トリプタンが使いにくかった方に、選択肢が増えました
トリプタンは、広がった血管を収縮させることで片頭痛の発作をおさえます。よく効く薬ですが、血管を縮める作用があるため、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞の既往がある方、血圧のコントロールが難しい方には使えません。
今回ご紹介する2剤は、どちらも血管を収縮させる作用がありません。
そのため、これまで心臓や血管の事情でトリプタンを見送っていた方にも、使える可能性があります。
仕組みが違うだけでなく、2剤は「得意なタイミング」も異なります。ここが使い分けの要になります。
ラスミジタン(レイボー)― 飲み遅れても効果が期待できる薬
ラスミジタンは、脳の神経に直接働きかけて痛みの信号をおさえるタイプの薬です。
最大の特徴は、飲むのが遅れた発作にも効果が期待できることです。
トリプタンは痛みが軽いうちに飲むのが原則で、ピークを過ぎてからでは効きにくくなります。これに対してラスミジタンは、痛みが強くなってから飲んでも効果が得られたという報告があります。
「仕事が立て込んでいて飲みそびれた」「朝起きたらすでに痛かった」という方には、心強い選択肢です。
また、薬剤の使用過多による頭痛(薬を使いすぎることで起こる頭痛)を誘発しにくいとされている点も、この薬の特徴です。
一方で、注意点があります。
めまい、眠気、だるさといった副作用が比較的出やすく、服用後しばらくは自動車の運転や機械の操作ができません。添付文書では、服用後少なくとも8時間はこれらを避けるよう定められています。
そのため、はじめて使うときは、休日や帰宅後など、横になれる環境で試していただくようご案内しています。
通勤中や仕事中に使いたい方には向かない場合があり、ここは正直にお伝えしています。
リメゲパント(ナルティーク)― 早めに飲むほど力を発揮する薬
リメゲパントは、片頭痛の発作に深く関わるCGRPという物質の働きをブロックする飲み薬です。2025年に国内で承認された、比較的新しい薬です。
口の中で溶けるタイプ(OD錠)なので、水がなくても飲めます。吐き気がある発作のときにも使いやすい形です。
こちらは、ラスミジタンとは逆に、発作の早い段階で飲んだほうが効果がはっきり出やすいという特徴があります。
「頭痛が始まりそうだ」という感覚をつかめている方、前ぶれが分かる方に向いています。
眠気が問題になりにくいため、服用後の運転制限がない点も、仕事のある平日には大きな利点です。
また、ラスミジタン同様、薬剤の使用過多による頭痛(薬を使いすぎることで起こる頭痛)を誘発しにくいとされている点も、この薬の特徴です。
なお、この薬は発作時の治療だけでなく、1日おきに飲み続けることで発作そのものを減らす予防の使い方もできます。この点については、別記事にて紹介しています。
2つの薬の使い分け
同じ「トリプタン以外の新しい薬」でも、向く場面が分かれます。
ラスミジタンが向きやすい方
発作に気づくのが遅れがちな方、起きた時点ですでに痛みが強い方、トリプタンを飲むタイミングを逃して失敗した経験がある方。横になれる環境を確保しやすい方。
リメゲパントが向きやすい方
発作の始まりを自覚できる方、日中に車の運転や危険をともなう作業がある方、眠気を避けたい方、吐き気で錠剤が飲みにくい方。
どちらも血管を収縮させないため、心臓や血管に不安のある方には共通して選びやすい薬です。
ただし、合う合わないは実際に使ってみないと分かりません。発作の出方や生活パターンをうかがいながら、一緒に決めていきます。
トリプタンが効かなかったときに「追加する」という考え方
トリプタンを飲んだものの、2時間たっても痛みが引かない。そんなときに、ラスミジタンを追加で使う方法を取り入れている施設が全国にあります。
仕組みの異なる薬を順番に使うことで、発作を途中から立て直すという発想です。遅れて飲んでも効果が期待できるラスミジタンの特性を活かした使い方といえます。
ただし、これは添付文書に定められた用法ではなく、医師の判断のもとで行われるものです。
手元にある薬を自己判断で足していくと、量が増えすぎたり、眠気のある状態で運転してしまったりと、別の危険が生じます。
関心のある方は、まず診察でご相談ください。
これまでの発作の経過、お持ちの病気、その日の予定まで含めて、使い方を具体的に決めていきます。
注射で予防している方の、発作時のお守りとして
エムガルティ、アジョビ、アイモビーグといった注射の予防治療を受けている方も、発作がゼロになるわけではありません。
「月に1〜2回は長く続く片頭痛発作、どうしても出てしまう」という声を聞くことがあります。
こうした注射による予防治療を続けながら、発作が起きたときの頓服としてリメゲパントを使うことができます。注射中の方が発作時に服用し、痛みがおさまったという報告があります。
予防で発作の回数を減らし、それでも出てしまった発作は頓服でおさえる。この組み合わせにより、痛み止めを飲む日数そのものを減らしていくことが期待できます。
ただし、どちらもCGRPという同じ経路に働く薬のため、重ねて使うことになります。
脳梗塞や心臓の血管の病気がある方、その既往がある方、脳の血管に細くなっている部分がある方などでは、慎重な判断が必要です。日本頭痛学会のガイドラインでも、治療上の利点を十分に検討したうえで、適切と判断される方に限って行うこととされています。
すでに注射を受けている方で、発作時の薬に満足できていない方は、一度ご相談ください。これまでの病歴を確認したうえで、組み合わせてよいかを判断します。
こんな症状はありませんか?
新しい薬が選択肢になるかどうかのチェックです。当てはまるものを数えてみてください。
- トリプタンを飲んでも、効かないことがある
- 気づいたときには、すでに痛みがピークになっている
- 朝起きた時点で、もう頭痛が始まっている
- 心臓や血管の病気があり、片頭痛の薬を使いにくいと言われた
- 吐き気が強く、錠剤を飲むのがつらい
- 注射の予防治療を受けているが、発作が出る日がある
ひとつでも当てはまる方は、発作時の薬を見直すことで、生活のしやすさが変わる可能性があります。
また、痛み止めやトリプタンを使う日数が増えている方は、発作の回数を減らす予防治療もあわせてご検討ください。薬を使う日が月の半分を超える状態が続くと、薬そのものが頭痛を起こりやすくしてしまうことがあります。
次のような頭痛は、別の病気が原因となっている可能性があります。
- 今までに経験したことがない、突然の激しい頭痛
- 手足が動かしにくい、しびれる、ろれつが回らない
- 発熱や首のこわばりを伴う
- 頭痛が日に日に強くなっている
当てはまる場合は、手持ちの薬で様子を見ず、早めの受診をご検討ください。突然の激しい頭痛や意識の異常があるときは、救急要請を含めた緊急の対応が必要です。
当院でできること
当院では、トリプタンに加えて、ラスミジタンやリメゲパントを含めた発作時の薬をご提案しています。
これまでに使った薬とその効き方、発作が起きる時間帯、お仕事の内容までうかがったうえで、生活に合う薬と飲み方を一緒に決めていきます。
発作の回数が多い方には、注射を含めた予防治療もご案内しています。頭痛ダイアリーを使って、発作の日数と薬を飲んだ日数を確認しながら調整します。
別の病気による頭痛が疑われる場合は、院内で頭部CT検査を行うことができます。必要に応じて、連携施設での頭部MRI検査や、陣の内脳神経外科との連携により対応いたします。
まとめ
・ラスミジタンとリメゲパントは、血管を収縮させない新しいタイプの薬です
・飲み遅れた発作にはラスミジタン、早めに気づける発作にはリメゲパントが向きます
・注射で予防している方の、発作時の薬としても選択肢になります
「もう使える薬がない」と言われた方も、一度ご相談ください。
記事中に挙げた薬剤は、いずれも国内で承認されている医療用医薬品です。効果やあらわれる副作用には個人差があり、すべての方に使用できるわけではありません。お持ちの病気や併用中のお薬、妊娠・授乳の状況によっては使用できない場合があります。記事内で触れた薬剤の組み合わせを含め、使用には医師の診察と処方が必要です。手元のお薬を自己判断で追加しないでください。保険診療として行っており、費用は診療内容によって異なります。ご不明な点は当院(電話 092-791-3985)までお問い合わせください。
参考文献
【ガイドライン・公的文書】
1) 日本頭痛学会. CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン. CQ-10 CGRP受容体拮抗薬リメゲパントを片頭痛治療においてどのように使用するか.
2) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修. 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院.
3) 国際頭痛学会. 国際頭痛分類 第3版(ICHD-3).
4) 厚生労働省. 使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発1111第6号, 令和7年11月11日).
【添付文書・適正使用ガイド】
5) ナルティークOD錠75mg 添付文書(2025年9月, 第1版).
6) ナルティークOD錠 適正使用ガイド. ファイザー株式会社.
7) レイボー錠 添付文書.
【臨床試験・文献】
8) Croop R, et al. Efficacy, safety, and tolerability of rimegepant orally disintegrating tablet for the acute treatment of migraine: a randomised, phase 3, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2019;394:737-45.
9) Croop R, et al. Oral rimegepant for preventive treatment of migraine: a phase 2/3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2021;397:51-60.
10) Ikeda K, et al. Efficacy and safety of rimegepant for the acute treatment of migraine in Japan: A dose-ranging, double-blind, randomized controlled trial. Headache. 2025.
11) Kitamura S, et al. Efficacy and safety of rimegepant for the preventive treatment of migraine in Japan: A double-blind, randomized controlled trial. Headache. 2025;65:1403-12.
12) Berman G, et al. Safety of Rimegepant, an Oral CGRP Receptor Antagonist, Plus CGRP Monoclonal Antibodies for Migraine. Headache. 2020;60:1734-42.
13) Mullin K, et al. Potential for treatment benefit of small molecule CGRP receptor antagonist plus monoclonal antibody in migraine therapy. Neurology. 2020;94:e2121-5.
14) Eller MT, et al. CGRP-Targeted Migraine Therapies in Patients With Vascular Risk Factors or Stroke: A Review. Neurology. 2025;105:e213852.
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以上、【片頭痛の新しい薬|レイボーとナルティーク、トリプタンとの違い】でした。
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