日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。
「採血だけで、いろいろながんが分かる検査があると聞きました」
「胃カメラや便の検査は苦手なので、血液検査だけで済ませたいです」
「自費の血液検査で『がんの疑い』と言われ、どうしたらよいか不安です」
こんな経験はありませんか。
最近、1回の採血で、いくつものがんの兆しを調べる検査が話題になっています。
2026年9月、英国で約14万人が参加した大規模な試験の結果が、医学誌に発表されました。
今回は、その結果から分かったことと、受ける前に知っておきたいことをご紹介します。

血液でがんを調べる、とはどういうこと?
がん細胞からは、ごく小さなDNAのかけらが血液の中に出てきます。
このかけらの特徴を調べて、がんの兆しがあるか、どの臓器のがんらしいかを推定する検査があります。
「多がん早期検出検査(たがんそうきけんしゅつけんさ)」と呼ばれ、多くの種類のがんをまとめて調べることを目指しています。
結果は、主に次の2つです。
- 陽性(ようせい):がんの兆しあり。CTや内視鏡などで、本当にがんがあるかを調べます
- 陰性(いんせい):がんの兆しは見つからなかった
英国14万人の試験で分かったこと
英国で、50〜77歳の約14万2,000人が参加した試験です。
くじ引きで2つのグループに分け、片方だけが、年1回・最大3回この検査を受けました。
もう片方は採血して保存するだけで、いつもどおりの診療を続けました。
- 主な目標は、12種類のがん(肺・大腸・膵臓・胃・食道・卵巣など)で、進行したがん(III期・IV期)を減らすことでした
- 10万人あたり年で、検査を受けたグループ300.5件、受けなかったグループ292.5件と、ほとんど差がありませんでした
- 最も進んだIV期は、検査を受けたグループが年145.2件と、受けなかったグループ(168.5件)よりやや少なめでした。ただし、はっきりした差とまでは言えず、今後の確認が必要です
- 陽性と出た人のうち、実際にがんと診断されたのは、検査の回ごとに46〜58%でした
- 検査から1年以内に見つかったがんのうち、この検査で陽性と出ていたのは27〜37%でした
- がんで亡くなる人が減るかどうかは、まだ分かっていません。研究者は、より長い追跡が必要だとしています
なお、この試験は、検査を開発した会社の資金で行われました。
米国の研究でも、「陰性なら安心」とは言えません
米国でも、50歳以上で、がんの疑いがない約3万2,000人を調べた研究が報告されました。
- 陽性と出た人のうち、がんが見つかったのは約6割(60.3%)。約4割はがんが見つかりませんでした
- 検査から1年以内に見つかったがんのうち、この検査で陽性と出ていたのは約4割(39.3%)でした
- がんを1人見つけるのに、185人が検査を受ける計算でした
陽性でもがんがないことがあり、陰性でもがんがないとは言い切れません。
陽性のときは、どこのがんかを探すために、CTや内視鏡などの検査が続くことがあります。
受ける前に知っておきたいこと
血液でがんを調べる検査は、国のがん検診の代わりにはなりません。
国が勧めるのは、がんで亡くなる人を減らせることが確かめられた、次の検診です。
- 胃がん:50歳以上、2年に1回(胃のX線検査または胃内視鏡)
- 大腸がん:40歳以上、年1回(便の潜血検査)
- 肺がん:40歳以上、年1回(胸部X線検査)
- 乳がん:40歳以上の女性、2年に1回(マンモグラフィ)
- 子宮頸がん:20歳以上の女性、2年に1回(細胞診)など
血液でがんを調べる検査の多くは、自費(全額自己負担)です。
また、どの検診にも、がんがないのに精密検査になる「偽陽性(ぎようせい)」があります。
命に関わらないがんを見つけて、不要な治療につながる「過剰診断」という不利益もあります。
関連記事:肺がん検診、「異常なし」1回で終わりにしていませんか? ― 喫煙歴のある方の低線量CT
「検診を待たずに」受診してほしい症状
症状があるときは、検診ではなく、医療機関で調べることが大切です。
次のようなときは、早めに受診してください。
- 2週間以上続く咳や、血の混じった痰(たん)
- はっきりした理由のない体重の減少
- 便に血が混じる、黒い便が出る
- 食べ物が飲み込みにくい、胃の痛みが続く
- 乳房のしこり、月経以外の出血
- 息切れや胸の痛みが続く
こんな症状はありませんか?
- 血液だけでがんが分かる検査が気になっている
- ここ数年、がん検診を受けていない
- 自費の検査で「がんの疑い」と言われ、迷っている
- 「陰性」だったので、検診はもう要らないと思っている
- たばこを吸っている、または以前吸っていた
- 咳や痰、息切れが続いている
当院でできること
- よその施設の血液のがん検査で「陽性」と言われた方のご相談:診察のうえ、必要な検査や専門の病院へのご紹介を行います。ふだんの診察のご予約で承ります。検査結果の用紙をお持ちください
- 咳・痰・息切れなど、気になる症状の診察と、胸部X線検査(AIによる読影支援)・胸部CT(保険診療)
- 肺ドック(胸部低線量CT・自費 7,700円(税込)):2026年11月10日から始めます。被ばくがあること、精密検査が必要になる場合や過剰診断、肺以外の所見が見つかる場合があります
- アミノインデックス(自費・それぞれ39,600円(税込)):血液中のアミノ酸のバランスから、病気のリスクを評価します。今回の試験の検査とは、しくみが違います
- がんリスクスクリーニング(AICS):いま、がんがある可能性を評価します。男性は胃・肺・大腸・膵臓・前立腺の5種類、女性は胃・肺・大腸・膵臓・乳・子宮/卵巣の6種類です
- 生活習慣病リスクスクリーニング(AILS):脳卒中・心筋梗塞や糖尿病などのリスクを評価します
- がんがあるかないかを決める検査ではなく、国のがん検診の代わりにはなりません。がんがなくても高い値が出ることや、低い値でもがんがあることがあります
- 妊娠中・授乳中の方、がんの治療中の方などは受けられません。検査の前8時間は水以外の飲食を控え、午前中に採血します
※福岡市のがん検診など、自治体の健診・検診は、当院では行っていません。
診療案内:検診
診療案内:CTスキャン
診療案内:採血の実施について
まとめ
・血液で複数のがんを調べる検査は、英国の大規模な試験で、進行したがんを減らす効果がはっきりしませんでした
・陽性でも約4〜5割はがんが見つからず、陰性でもがんがないとは言い切れません
・まずは国が勧めるがん検診を続け、気になる症状や検査結果は、早めにご相談ください
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断や治療方針を示すものではありません。内容は掲載時点の情報にもとづいています。症状のあらわれ方や、検査・治療の必要性は患者さんごとに異なります。記載した検査の結果の解釈には医師の診察が必要で、費用は診療内容によって異なります。ご不明な点は当院(電話 092-791-3985)までお問い合わせください。
今回の記事の根拠
・Sasieni P, et al. Effect of Screening with Multicancer Early-Detection Test on Late-Stage Cancer Diagnosis. N Engl J Med. 2026;395(14):1374-1386.(https://doi.org/10.1056/NEJMoa2505723)
・Neal RD, et al. Performance of a multi-cancer early detection test in the randomized controlled NHS-Galleri trial. Nat Med. 2026;32(10):3770-3780.(https://doi.org/10.1038/s41591-026-04652-8)
・Nabavizadeh N, et al. Performance and safety of a multi-cancer early detection test: the PATHFINDER 2 study. Nat Med. 2026;32(10):3760-3769.(https://doi.org/10.1038/s41591-026-04618-w)
※3本とも、検査を開発した会社(GRAIL社)が資金を出したり、社員が著者に入ったりしている研究です
・国立がん研究センター がん対策研究所「がん検診の『適切な受け方』」(2026年3月)
・厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」
診察のご予約はこちらから🌿
Web・アプリから24時間ご予約いただけます。
下記よりデジスマ診察券アプリのダウンロードも大変便利です。
以上、【血液検査で複数のがんが分かる? どこまで頼れるか ― 英国14万人の試験から】でした。
『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。
コメント