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健康コラム

大人の長引く咳、百日咳かもしれません ― 赤ちゃんにうつさないために

日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。

「咳き込むと止まらなくて、吐きそうになります」
「夜中に咳で目が覚めて、息を吸うのが苦しいんです」
「来月、孫が生まれるのに、咳がもう3週間続いています」

こんな咳に心当たりはありませんか?

熱はないのに、咳だけが何週間も続く。
いったん咳き込むと、止まらなくなる。
それは、百日咳(ひゃくにちぜき)かもしれません。

今回は、大人の百日咳の特徴と、
身近な赤ちゃんを守るために知っておきたいことをお伝えします。


2025年、百日咳は過去最多の流行になりました

百日咳は、百日咳菌という細菌による感染症です。
とても感染力が強く、咳やくしゃみのしぶきでうつります。

2025年は全国で大きな流行となり、
すべての患者さんを数える仕組みになった2018年以降で最多の報告数でした。
2018年に週あたり平均219人だった報告が、
2025年の夏には週平均2,014人に達しています。
(岡田賢司、日本ワクチン学会ニュースレター、2025年)

2026年は前年より落ち着いているものの、
例年より高い水準が続いていると報告されています。
福岡県でも、今年9月中旬までに214件の報告がありました。
(福岡県感染症発生動向調査週報、令和8年第38週)
当院でも、月に平均5例の保健所への報告を行っております。(百日咳と診断した医師は、感染症法に基づき7日以内に管轄の保健所へ発生届を提出する必要があります。)

患者さんの中心は10代ですが、大人の報告も少なくありません。


大人の百日咳は「ただの長引く咳」に見えます

百日咳は、典型的には次のように進みます。

・はじめの1〜2週間:鼻水や軽い咳など、かぜとよく似た症状
・その後2〜3週間:短い咳が連続して止まらなくなる発作
・回復まで:咳が少しずつおさまるまで、数週間から数か月

子どもでは、咳き込んだあとに「ヒュー」と息を吸い込む音が特徴です。
ところが大人では、こうした典型的な症状が出にくく、
「長引く咳」だけのことが多いとされています。

次のような特徴があるときは、百日咳を疑う手がかりになります。

・咳き込むと止まらない(発作のような咳)
・咳き込んだあとに、吐きそうになる
・夜中に咳で目が覚める
・周りに、同じように咳をしている人がいる

もうひとつ大切なのは、
かぜのように見える最初の時期が、いちばん人にうつしやすいことです。


いちばん守りたいのは、赤ちゃんです

大人の百日咳は、つらくても命に関わることはまれです。

ところが、赤ちゃんがかかると話が変わります。
特にワクチンを打つ前の生後2か月未満では、
呼吸が止まる発作や脳症などを起こし、命に関わることがあります。
実際に、重症例や亡くなった例も報告されています。
(日本小児科学会、2025年6月)

そして赤ちゃんにうつすのは、多くの場合、身近な家族です。

お子さんやお孫さんが生まれる予定の方、
赤ちゃんと接する機会のある方は、
長引く咳を「そのうち治る」と放置しないでください。


当院での診断 ― PCR検査と抗体検査

百日咳は、症状だけで確実に見分けることはできません。
当院では、検査で確かめます。

PCR検査(遺伝子検査)

鼻の奥を細い綿棒でぬぐい、百日咳菌の遺伝子を調べます。
当院では、その日のうちに結果をお伝えできます。

抗体検査(血液検査)

すでに抗菌薬を飲み始めている方や、咳が出てから時間がたっている方は、
菌そのものが見つかりにくくなります。
その場合は、血液で百日咳に対する抗体(PT-IgG)を測ります。

抗体の値は、100(EU/mL)以上をひとつの目安にしています。
ただし、ワクチンの影響なども受けるため、
症状や経過とあわせて、総合的に判断します。
(日本呼吸器学会『咳嗽に関するガイドライン第2版』)


治療 ― 抗菌薬と「効きにくい菌」

百日咳には、マクロライド系という種類の抗菌薬を使います。

当院では、アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)を第一選択としています。
短い期間の服用で済み、国内外のガイドラインで第一選択とされている薬です。
ただし、百日咳に対しては保険上の適応がありません。
保険の審査上は使用が認められている扱いです。
(日本呼吸器学会『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025』、東京都感染症マニュアル)

なお、同じ系統のクラリスロマイシンやエリスロマイシンは、
百日咳に対する保険上の適応があります。

抗菌薬は、早い時期ほど症状を軽くする効果が期待できます。
一方、咳の発作が始まってからでは、咳そのものはすぐには止まりません。
それでも、周りの人にうつすのを防ぐために、治療が大切です。

効きにくい菌(耐性菌)が増えています

近年、マクロライド系の抗菌薬が効きにくい百日咳菌が増えています。
国の研究班の調査では、2024年度末の時点で、
百日咳菌の約4割が効きにくい菌に置き換わっていたと報告されています。
(厚生労働科学研究、令和6年度報告書)

効きにくい菌が疑われる場合は、
別の系統の抗菌薬であるST合剤(商品名:バクタ)を検討します。
ただしこの薬は、薬疹(薬による発疹)が出ることがあり、
まれに重い皮膚の症状につながることもあります。
そのため、使う場合は皮膚の変化に十分注意しながら経過をみます。
妊娠中の方や新生児には使えません。


予防 ― 大人の追加接種

百日咳は、ワクチンで予防できる病気です。
ただ、子どもの頃に受けたワクチンの効果は、年月とともに弱まります。

大人の追加接種(当院で対応しています)

大人も、百日咳・ジフテリア・破傷風を予防する
3種混合ワクチンで追加接種を受けることができます。
赤ちゃんを迎えるご家族や、乳幼児と接するお仕事の方は、
ご自身と赤ちゃんを守る方法のひとつとして、ご検討ください。

知っておきたい、ほかの年代のワクチン

・赤ちゃん:生後2か月から、定期接種の5種混合ワクチンが始まります
・就学前と11〜12歳:3種混合ワクチンによる追加接種が、日本小児科学会から勧められています
・妊娠中の方:生まれてくる赤ちゃんを守る目的での接種について、
 学会が考え方を示しています。かかりつけの産科でご相談ください


こんな咳はありませんか?

  • 咳が2週間以上続いている
  • 咳き込むと止まらず、息を吸うのが苦しい
  • 咳き込んだあとに、吐きそうになる
  • 夜中に咳で目が覚める
  • 熱はないのに、咳だけがひどい
  • 家族や職場に、同じような咳の人がいる

いくつか当てはまる方は、一度ご相談ください。
赤ちゃんと接する予定のある方は、特にお早めに。


赤ちゃんのこんな様子は、すぐに受診を

生後6か月未満の赤ちゃんで、次のような様子があるときは、すぐに小児科や救急を受診してください。

  • 咳き込んだあと、呼吸が止まったように見える
  • 顔色や唇の色が悪くなる
  • 咳き込んで、ミルクが飲めない
  • ぐったりしている

赤ちゃんの百日咳は、咳が目立たず、呼吸が止まる発作だけのこともあります。


当院でできること

・百日咳のPCR検査(当日に結果をお伝えします)
・抗体検査(血液検査)
・胸のレントゲンやCTによる、肺炎などほかの病気の確認
・大人の百日咳ワクチン(3種混合ワクチン)の追加接種

呼吸器内科と呼吸器外科の専門医が、検査から治療、予防まで一貫して対応します。
長引く咳でお困りの方は、お気軽にご相談ください。


まとめ

大人の百日咳は、「ただの長引く咳」に見えることが多く、気づかないうちに周りへ広げてしまうことがあります。

赤ちゃんがかかると命に関わることがあるため、身近に赤ちゃんがいる方は特に、早めの検査が大切です。

当院では、PCR検査でその日のうちに結果をお伝えできます。大人の追加接種にも対応しています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断や治療方針を示すものではありません。内容は掲載時点の情報にもとづいています。症状のあらわれ方や、検査・治療の必要性は患者さんごとに異なります。記載した検査や薬剤の使用には医師の診察が必要で、費用は診療内容によって異なります。ご不明な点は当院(電話 092-791-3985)までお問い合わせください。


今回の記事の根拠

  • 日本呼吸器学会 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2025作成委員会(編)『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025』メディカルレビュー社、2025年(第4章A 感染性咳嗽)
  • 日本呼吸器学会『咳嗽に関するガイドライン第2版』2019年
  • 東京都感染症情報センター「東京都感染症マニュアル」百日咳の項(2025年改正)
  • 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について」2025年3月29日
  • 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「生後2か月未満の乳児における重症百日咳の発症に関する注意喚起と治療薬選択について」2025年6月22日
  • 砂川富正(研究代表者)「百日咳とインフルエンザに関するサーベイランス手法及びワクチン効果の評価に資する研究」令和6年度 厚生労働科学研究費補助金 総括研究報告書
  • 岡田賢司「2025年感染拡大した百日咳対策を考える」日本ワクチン学会ニュースレター vol.45、2025年
  • 堀越裕歩「百日咳ワクチン」medicina 2022;59(3):546-548.
  • 福岡県「福岡県感染症発生動向調査感染症週報」令和8年第38週(令和8年9月28日公表)

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以上、【大人の長引く咳、百日咳かもしれません ― 赤ちゃんにうつさないために】でした。
『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。

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