日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。
「健診の尿検査はいつも『異常なし』なので、腎臓は大丈夫だと思っています」
「糖尿病で通院していますが、気にしていたのはHbA1cの数字だけでした」
「腎臓が悪くなったら、むくみやだるさで気づけますよね?」
こんな経験はありませんか。
糖尿病による腎臓の病気は、症状がないまま進むことがあります。
その早いサインは、尿に出るわずかなたんぱく質「アルブミン」でわかります。
11月14日は「世界糖尿病デー」です。
今回は、尿のアルブミンの有無で、腎臓を守る薬の効き方が違ったという海外の研究をご紹介します。
あわせて、当院で始めた尿アルブミンの院内迅速検査もお伝えします。

糖尿病は、なぜ腎臓に負担をかけるの?
腎臓には、血液をこして尿をつくる細い血管のかたまり(糸球体:しきゅうたい)がたくさんあります。
血糖の高い状態が続くと、この細い血管が少しずつ傷みます。
すると、本来は尿に出ないアルブミンが、少しずつ漏れ出してきます。
糖尿病が関係する腎臓の病気は「糖尿病関連腎臓病(DKD)」とも呼ばれます。
日本で新しく透析を始める方の原因で最も多いのは、糖尿病による腎臓の病気です(日本透析医学会)。
むくみやだるさなどの症状は、かなり進んでから出ることが多いとされています。
関連記事:HbA1cが高いと言われたら?2型糖尿病と合併症、薬の選び方【生活習慣病シリーズ第3回】
健診の尿検査だけでは、見つけにくいことがあります
健診の尿検査(試験紙)は、ある程度の量のたんぱくが出ないと「陽性」になりません。
そのため、早い段階のわずかなアルブミンは見逃されることがあります。
尿のアルブミンは、尿の濃さで補正した値(尿アルブミン/クレアチニン比、単位mg/gCr)で判断します。
- 30未満:正常アルブミン尿
- 30〜299:微量アルブミン尿(腎臓の変化が始まった早い段階)
- 300以上:顕性(けんせい)アルブミン尿(はっきり漏れ出している段階)
日本腎臓学会の診療ガイドでは、糖尿病の方は年に1回は尿のアルブミンを測ることが勧められています。
腎臓の病気と診断された後は、3か月に1回が目安です。
一方で、アルブミンが出ないまま腎臓の働き(eGFR)が下がる方もいます。
尿と血液の両方で確かめることが大切です。
尿のアルブミンで、薬の効き方が違った ― 2026年9月の研究
2026年9月、英国の医学誌「BMJ」に、米国のデータを使った研究が発表されました。
メトホルミン(糖尿病の飲み薬)で治療中の2型糖尿病の方、約7万5千人が対象です。
2つ目の薬として、次のどちらかを始めた人を比べました。
- GLP-1受容体作動薬(注射・飲み薬)またはSGLT2阻害薬(飲み薬)
- DPP-4阻害薬(飲み薬)
腎臓の働きが大きく悪化した人(血液のクレアチニンが2倍、またはeGFRが15未満)の割合を、5年間の推定で比べました。
数字は「GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬の群」と「DPP-4阻害薬の群」の順です。
- 尿にアルブミンが出ていた人(約1万4千人):3.2%と5.4%で、約4割少ない結果でした
- 出ていなかった人:2.4%と2.1%で、はっきりした差はみられませんでした
尿のアルブミンの有無によって、薬の選び方の意味が変わる可能性が示されました。
この研究を読むときの注意点
- 実際の診療記録を使った研究で、くじ引きで薬を決める試験(ランダム化比較試験)ではありません
- 米国のデータのため、日本の方にそのまま当てはまるとは限りません
- アルブミンが出ていない人で「効果がない」と決まったわけではありません。追跡期間(中央値で約2年半)の中では、差がはっきりしなかったという結果です
- 薬にはそれぞれ得意なことがあります。どの薬が合うかは、腎臓の状態、体重、ほかの病気などで変わります
これらの薬は、国内の糖尿病診療ガイドライン2024でも、腎臓を守る観点から取り上げられています。
お薬を自己判断で変えたり、やめたりしないでください。
腎臓を守るために、ふだんからできること
- 血糖:HbA1cの目標は、年齢や持病に合わせて医師と決めます
- 血圧:減塩(1日6g未満が目安)と家庭での血圧測定を続けます
- 禁煙:たばこは、腎臓を含む全身の血管に負担をかけます
- 痛み止めの使い方:市販の痛み止め(NSAIDs:エヌセイズ)を長く続けるときは、医師や薬剤師にご相談ください
- 定期的な検査:年に1回以上、尿のアルブミンと血液検査(eGFR)を確認します
関連記事:「血圧が高め」と言われたら?高血圧の基本と2025年改訂の新しい目標【生活習慣病シリーズ第1回】
関連記事:鎮痛薬の基本|アセトアミノフェンとNSAIDs、その使い分け(改訂版)
「いつもの疲れ」と思い込まないでほしい症状
次のような症状があるときは、早めにご相談ください。
- 足やまぶたのむくみが、急にひどくなった
- 尿の量が急に減った
- 少し動くだけで息切れがする、横になると息苦しい
- 吐き気や食欲の低下、強いだるさが続く
- 尿が赤い、または茶色い
症状が強いときや夜間・休日は、救急外来の受診をご検討ください。
こんなことはありませんか?
- 糖尿病で通院しているが、尿のアルブミンを測ったことがない(覚えていない)
- 健診の尿たんぱくで「±」と言われたことがある
- 血圧も高めと言われている
- HbA1cが目標より高い状態が続いている
- たばこを吸っている
- 頭痛や腰痛などで、痛み止めをよく飲む
当てはまるものがあれば、お気軽にご相談ください。
当院でできること
- 尿アルブミンの院内迅速検査:尿アルブミン/クレアチニン比を院内で測り、当日の診察で結果をご説明します。使用する機器は「アフィニオン 2」(アボット社)です
- 保険診療での測定:糖尿病で通院中の方で、腎臓の変化が早い段階のものを疑う場合に、3か月に1回測定できます。保険の決まりにより、対象とならない場合もあります
- 当日結果がわかるHbA1c・尿検査
- 腎臓の働き(eGFR)を調べる血液検査(結果は翌日以降にわかります)
- 血糖を下げる飲み薬の処方(SGLT2阻害薬など)
- GLP-1受容体作動薬(GIP/GLP-1受容体作動薬を含む)の注射治療を、導入から継続まで当院で行います
- インスリン治療は、導入を連携する医療機関で、継続を当院で行います
- 管理栄養士による食事のご相談(減塩など)
- 腎臓の専門的な検査や治療が必要なときは、総合病院へご紹介します。紹介先は、浜の町病院、済生会福岡総合病院、九州医療センター、福岡赤十字病院などです
まとめ
・糖尿病による腎臓の変化は、症状が出る前に「尿のアルブミン」で見つかることがあります
・海外の研究では、尿にアルブミンが出ている方で、薬の種類によって腎臓の悪化に差がみられました
・当院では尿のアルブミンを院内で測り、当日の診察で結果をご説明します
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断や治療方針を示すものではありません。内容は掲載時点の情報にもとづいています。症状のあらわれ方や、検査・治療の必要性は患者さんごとに異なります。記載した検査や薬剤の使用には医師の診察が必要で、費用は診療内容によって異なります。ご不明な点は当院(電話 092-791-3985)までお問い合わせください。
今回の記事の根拠
・Turchin A, et al. Renal outcomes in people with type 2 diabetes with and without albuminuria treated with SGLT-2 inhibitors and GLP-1 receptor agonists: target trial emulation. BMJ. 2026;394:e100574.(https://doi.org/10.1136/bmj-2026-100574)
・糖尿病性腎症合同委員会「糖尿病性腎症病期分類2023の策定」日本腎臓学会誌. 2023;65(7):847-856.
・日本腎臓学会『エビデンスに基づくCKD診療ガイド2024』(糖尿病関連腎臓病)
・日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2023年12月31日現在)」
・厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(アルブミン定量(尿)の算定要件)
診察のご予約はこちらから🌿
Web・アプリから24時間ご予約いただけます。
下記よりデジスマ診察券アプリのダウンロードも大変便利です。
以上、【糖尿病の方、「尿のアルブミン」を測っていますか? ― 腎臓を守る早めのチェック】でした。
『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。
コメント