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健康コラム

「肝機能が高め」と言われたら? ― やせていても油断できない脂肪肝(MASLD)

日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。

「健診で毎年ALTが少し高いのですが、太っていないので気にしていませんでした」

「お酒はほとんど飲まないのに、脂肪肝と言われました」

「脂肪肝は放っておいても大丈夫、と聞いたことがあります」

こんな経験はありませんか。
脂肪肝は、太っている人やお酒を飲む人の病気と思われがちです。
実際には、やせている方やお酒を飲まない方にも見られます。
今回は、脂肪肝の新しい考え方と、健診の数字でわかる「肝臓の硬さ」の目安をお伝えします。

「肝機能が高め」と言われたら? ― やせていても油断できない脂肪肝(MASLD) 記事のポイント図解

脂肪肝の新しい呼び方「MASLD」

2024年8月、日本消化器病学会と日本肝臓学会は、脂肪肝の新しい病名を発表しました。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(たいしゃきのうしょうがいかんれんしぼうせいかんしっかん)、略してMASLDです。

次の3つがそろうとMASLDと診断されます。

  • 画像検査などで肝臓に脂肪がたまっている
  • 次の5つのうち1つ以上がある:BMI 23以上(または腹囲が大きい)/血糖が高め/血圧が高め/中性脂肪が高め/HDLコレステロールが低め
  • お酒の量が少ない(純アルコールで、1日あたり男性30g未満、女性20g未満)

純アルコール20gは、ビール中瓶1本(500mL)や日本酒1合が目安です。

日本では、成人の約4人に1人(25.5%)がMASLDと報告されています。
男性に多く、健診のデータでは男性37.4%、女性18.1%でした。

関連記事:HbA1cが高いと言われたら?2型糖尿病と合併症、薬の選び方【生活習慣病シリーズ第3回】


やせていても脂肪肝になります ― 最新の研究から

2026年9月、医学誌「JAMA」に、やせ型の脂肪肝を調べた研究が発表されました。
41か国で、肝臓の組織検査(肝生検)でMASLDと診断された18,326人を調べたものです。

  • やせ型(アジア人はBMI 23未満)の方は全体の6.7%、アジアでは11.3%(約9人に1人)でした
  • やせ型の方は、糖尿病や、肝臓の硬さが進んだ方の割合がやや少なめでした
  • それでも、亡くなる方や、肝がん・肝不全などの重い病気の起こりやすさは、太っている方と差がありませんでした

この研究で経過を左右したのは、体型ではなく「肝臓の硬さ(線維化)」でした。
線維化が進んでいた方は、亡くなる危険が約2.1倍、肝臓の重い病気が約3.4倍でした。

なお、肝生検を受けた方が対象のため、健診の方にそのまま当てはまるわけではありません。


大切なのは「肝臓の硬さ(線維化)」です

肝臓に脂肪がたまり、炎症が続くと、肝臓は少しずつ硬くなっていきます。
これを線維化(せんいか)といい、進むと肝硬変や肝がんにつながることがあります。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、硬くなっても、かなり進むまで症状がほとんど出ません。
そのため、症状がないうちに、健診の数字から肝臓の状態を見ておくことが大切です。

2026年に改訂された「MASLD診療ガイドライン」でも、線維化の進み具合が、肝臓の病気の経過を左右する一番の要因とされています。


健診の数字でわかる目安 ― ALTとFIB-4

日本肝臓学会は2023年に「奈良宣言」を出し、健診でALTが30を超えたら、まずかかりつけ医を受診するよう呼びかけています。

肝臓の硬さの目安には、FIB-4(フィブフォー)という数値が使われます。
年齢・AST・ALT・血小板の4つから計算でき、健診の血液検査の結果から出せます。

  • 1.3未満(66歳以上は2.0未満):肝臓が硬くなっている可能性は低い
  • 1.3〜2.67(66歳以上は2.0〜2.67):中間。肝臓の硬さを直接測る検査で、詳しく調べることが勧められます
  • 2.67超:肝臓が硬くなっている可能性が高く、消化器・肝臓の専門の医師への紹介が勧められます

例:60歳、AST 40、ALT 36、血小板18万の方は、FIB-4が約2.2で「中間」になります。

年齢が高いと数値が高めに出やすいため、66歳以上は基準を変えて判断します。


専門の医療機関での検査が勧められる目安

ガイドラインでは、次のどれかに当てはまる場合、消化器・肝臓の専門の医師への紹介が勧められています。

  • FIB-4が2.67を超える
  • FIB-4が中間で、肝臓の硬さを測る検査でも基準を超えている
  • 血小板が20万/μL未満
  • AST・ALTが高い状態が続いている
  • 画像検査で、肝硬変を疑う所見がある

肝臓の硬さを測る検査には、超音波で測るエラストグラフィ(フィブロスキャンなど)があります。
痛みはなく、数分で終わる検査です。
硬さの値が8kPa(キロパスカル)以上だと、線維化が進んでいる可能性の目安とされています。

診療案内:採血の実施について


肝臓のために見直したいこと

ガイドラインでは、生活習慣の見直しが治療の土台とされています。

  • 体重を減らす:5%以上の減量で肝臓の脂肪が減り、10%以上で線維化が改善する可能性があります。肥満でない方は、3〜5%の減量でも効果が期待できます
  • 食事:地中海食や日本食のような、バランスのよい食事を心がける。甘い飲み物や間食、夜遅い食事も見直す
  • 運動:ウォーキングなどの有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせ、合わせて週150分以上を目安に
  • お酒:MASLDの方では「これなら安全」という量はないとされています。少量の飲酒でも、線維化が進みやすくなることが報告されています。日本人、特に女性や、お酒で顔が赤くなりやすい体質の方(アルコールを分解する酵素「ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)」の働きが弱い方)は、より少ない量でも肝臓に負担がかかることがあります
  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症があれば、きちんと治療を続ける

お薬については、2026年6月、セマグルチド(商品名:ウゴービ)が、国内で初めてMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎:脂肪肝に炎症が加わった状態)の治療薬として承認されました。
対象は、肝硬変になっていないMASHで、中等度以上の線維化がある方に限られます。
肝生検などで線維化の程度を確かめたうえで、条件を満たす医療機関で使われます。

海外では、レスメチロム(海外での商品名:Rezdiffra)という飲み薬も、MASHの治療薬として承認されています(米国2024年、欧州2025年)。
ただし、現時点で日本国内では承認されておらず、使うことはできません。

関連記事:「コレステロールが高め」と言われたら?脂質異常症の基本と治療【生活習慣病シリーズ第2回】
診療案内:肥満予防


「ただの脂肪肝」と思い込まないでほしい症状

次のような症状があるときは、早めに受診してください。

  • 白目や皮膚が黄色い
  • 尿が濃い茶色になった
  • おなかが張る、足のむくみが強い
  • 体がだるい状態が続き、食欲が落ちた

血を吐いた、真っ黒な便が出た、意識がぼんやりするときは、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください。


こんな症状はありませんか?

  • 健診でALT(GPT)が30を超えていた
  • 健診や画像検査で「脂肪肝」と言われたことがある
  • やせ型だが、血糖や中性脂肪が高めと言われている
  • ここ数年で体重やおなか周りが増えた
  • 毎日お酒を飲む、または甘い飲み物をよく飲む
  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症で治療中、または指摘されている

当院でできること

  • 血液検査(AST・ALT・血小板など)で肝臓の状態を確認し、FIB-4を計算
  • 当日結果がわかるHbA1c・LDLコレステロールなど、生活習慣病の検査と治療
  • 管理栄養士による、食事やお酒の見直しのご相談
  • 内臓脂肪測定(CT・自費):おへその高さの断面画像から、内臓脂肪と皮下脂肪の面積を測ります。5,500円(税込)。結果は郵送(550円・税込)または窓口でのお渡しです。CT撮影のため、わずかな被ばくがあります
  • 肝臓の硬さを測る検査などが必要な場合は、連携する医療機関へご紹介します

診療案内:CTスキャン


まとめ

・脂肪肝(MASLD)は、日本の成人の約4人に1人に見られ、やせている方やお酒を飲まない方にも起こります
・経過を左右するのは体型より「肝臓の硬さ」です。健診のALTとFIB-4を確認しましょう
・ALTが30を超えたら、まずはご相談ください。生活の見直しと、必要に応じて精密検査につなげます

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断や治療方針を示すものではありません。内容は掲載時点の情報にもとづいています。症状のあらわれ方や、検査・治療の必要性は患者さんごとに異なります。記事中の薬剤は情報提供のために挙げたもので、使える方や医療機関には条件があり、当院での処方をお約束するものではありません。日本国内で承認されていない薬は、国内では使うことができません。記載した検査や治療には医師の診察が必要で、費用は診療内容によって異なります。ご不明な点は当院(電話 092-791-3985)までお問い合わせください。


今回の記事の根拠

・de Avila L, et al. Histologic Features and Clinical Outcomes of Lean Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease. JAMA. 2026.(https://doi.org/10.1001/jama.2026.18491)
・Akuta N, Kogiso T, et al. Evidence-based clinical practice guidelines for metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease (MASLD) 2026. J Gastroenterol. 2026;61(6):693-710.(https://doi.org/10.1007/s00535-026-02408-2)(日本消化器病学会・日本肝臓学会『MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)』の英語版。有病率、FIB-4と紹介の目安、減量・食事・運動・飲酒)
・日本消化器病学会・日本肝臓学会「脂肪性肝疾患の日本語病名」(2024年8月)
・日本肝臓学会「奈良宣言2023」(ALT>30でかかりつけ医へ)
・ノボ ノルディスク ファーマ「ウゴービ 代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の効能追加承認」(2026年6月19日)
・Madrigal Pharmaceuticals「European Commission approval of Rezdiffra (resmetirom) for MASH」(2025年8月)、米国食品医薬品局(FDA)による迅速承認(2024年3月)


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以上、【「肝機能が高め」と言われたら? ― やせていても油断できない脂肪肝(MASLD)】でした。
『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。

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