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健康コラム

<抗CGRP関連製剤>徹底解説シリーズ 第3回 「ゲパント製剤(ナルティーク・アクイプタ)ってご存知?」片頭痛の新しい飲み薬

日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。

このシリーズでは、片頭痛の予防治療について3回にわたって解説してきました。第1回ではエムガルティ、第2回ではアジョビとアイモビーグという、いずれも注射の薬をご紹介しました。

最終回となる今回は、飲み薬のお話です。
「注射はちょっと怖い」「毎月の注射が負担」という方にとって、朗報といえる選択肢が日本にも登場しました。ゲパントと呼ばれる、新しいタイプの内服薬です。

「ゲパント」とは何か

これまでご紹介してきた3つの注射薬は、いずれも「抗体」という大きなたんぱく質でできています。大きいがゆえに、胃で消化されてしまうため飲み薬にはできず、注射でしか投与できませんでした。

一方、ゲパントはずっと小さな分子でできた化合物です。小さいので、飲み薬として口から取り込めます。狙う相手は同じCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド=片頭痛の痛みの伝達に関わる物質)の受容体で、アイモビーグと同じ「受け皿をふさぐ」タイプです。

もう一つ、注射薬との大きな違いがあります。体から抜けるのが早いことです。注射薬は1か月ほど体内にとどまりますが、ゲパントは数日で抜けていきます。これは一長一短で、「合わなかったときに早く元に戻せる」という利点にもなれば、「飲み忘れると効果が途切れる」という欠点にもなります。

日本で使えるゲパントは、現在2種類です。順にご説明します。

ナルティーク(一般名:リメゲパント)

日本で最初に登場したゲパント

ナルティークは、日本で最初に発売されたゲパント製剤です。2025年12月に発売されました。承認されている効能・効果は「片頭痛発作の急性期治療及び発症抑制」で、この「及び」が、この薬の最大の特徴につながります。

最大の特徴は「二刀流」であること

これまでの片頭痛の薬は、役割がはっきり分かれていました。

  • 急性期治療薬:頭痛が起きたときに飲んで、痛みを抑える(トリプタンなど)
  • 予防薬:頭痛が起きていないときから続けて、発作の日数そのものを減らす

ナルティークは、この両方を1剤でこなせます。野球でいう二刀流のような存在、と言えば伝わりやすいかもしれません。

  • 急性期治療として使う場合:発作が起きたときに1回75mgを飲む
  • 予防として使う場合:75mgを1日おき(隔日)に飲み続ける

ただし、1日あたりの合計量は75mgを超えないことと定められています。「予防で飲んだ日に発作が来たから、もう1錠」という使い方はできません。この点はご注意ください。

水なしで飲めるOD錠

ナルティークはOD錠(口腔内崩壊錠=口の中で溶けるタイプの錠剤)です。水がなくても飲めます。

これは、実際の場面で大きな意味を持ちます。片頭痛の発作には吐き気を伴うことが多く、「気持ち悪くて水が飲めない」「飲んだら戻してしまいそう」という状況は珍しくありません。また、電車の中や会議中など、すぐに水を用意できない場面もあります。口に入れればそのまま溶ける薬は、そうしたときに頼りになります。

副作用が比較的少ない

ナルティークは、報告されている副作用の頻度が比較的低い薬です。添付文書で0.5〜1%以上の頻度として挙げられているのは、便秘、浮動性めまい、悪心、下痢、肝機能の数値(ALT)の上昇などです。

もう一点、従来の急性期治療薬との違いとして重要なのが、血管に関する禁忌がないことです。トリプタン系の薬は、心筋梗塞や狭心症の既往がある方、脳血管障害の既往がある方などには使えませんでした。ナルティークにはその制限がありません。ここは、これまで急性期治療の選択肢が限られていた方にとって、意味のある変化です。

ただし「禁忌がない=誰にでも無条件に使える」ではありません。次の項目でご説明します。

注射薬との併用という考え方

急性期にも予防にも使えるという性質を活かし、CGRPの注射薬を続けている方に、ナルティークを組み合わせるという使い方が検討されることがあります。注射で全体の頭痛日数を減らしつつ、それでも出てしまう発作にナルティークで対応する、という考え方です。

一方で、CGRPは血管を広げる働きを持ち、心臓や脳の血流が不足したときに保護的に働く可能性が指摘されています。そのため、CGRPの働きを抑える薬を重ねる場合、次のような背景をお持ちの方には慎重な判断が必要とされています。

  • 心筋梗塞や狭心症など、虚血性心疾患の既往がある
  • 脳梗塞や一過性脳虚血発作の既往がある
  • コントロールが不十分な重度の高血圧がある
  • 閉塞性動脈硬化症などの末梢血管の病気がある

該当する方は、必ず診察時にお伝えください。併用するかどうかは、頭痛の状況とこれらのリスクを見比べたうえで、医師が個別に判断します。ご自身の判断で市販薬や手持ちの薬と組み合わせることは避けてください。

弱点①|効果は比較的マイルドな可能性がある

予防効果を調べた臨床試験では、1か月あたりの片頭痛日数がナルティーク群で4.3日減少したのに対し、プラセボ(偽薬)群では3.5日減少でした。統計的には有意な差ですが、差そのものは1日弱です。注射薬と比べて、効き目が穏やかである可能性は否定できません。

そして、より重要な点があります。この試験に参加したのは、1か月あたりの片頭痛発作が4〜18回の方で、観察期間中の頭痛日数が18日を超える方は除外されていました。つまり、月に19日以上頭痛がある方についての予防データが存在しません。

慢性片頭痛(ひと月に15日以上頭痛があり、そのうち8日以上が片頭痛の状態)の方は、ナルティークよりも注射のCGRP関連製剤のほうが適している可能性があります。

弱点②|1日おきは、意外と忘れやすい

予防で使う場合、飲むのは1日おきです。毎日の習慣に組み込みにくく、「今日は飲む日だっけ」と迷いやすい飲み方でもあります。カレンダーに印をつける、スマートフォンのリマインダーを隔日で設定するなど、続けるための工夫をおすすめします。

アクイプタ(一般名:アトゲパント)

1日1回でよい

アクイプタは、2026年に日本で使えるようになった予防専用の飲み薬です。承認されている用法は60mgを1日1回。毎日同じ時間に1錠という、わかりやすい飲み方です。歯みがきや食事と結びつけやすく、隔日よりも習慣化しやすいという利点があります。

3つの規格があり、用量を調整できる

アクイプタには10mg、30mg、60mgの3つの規格があります。
通常は60mgですが、体の状態や飲み合わせに応じて、添付文書上、次のような調整が定められています。

  • 重度の腎機能障害がある方、透析が必要な段階の方 → 10mgを1日1回
  • 特定の薬(強いCYP3A阻害剤)を併用している方 → 10mgを1日1回
  • 別の特定の薬(OATP阻害剤)を併用している方 → 30mgを1日1回

持病をお持ちの方や、複数の薬を飲んでいる方でも、量を調整して使える余地があるということです。お薬手帳を必ずお持ちください。サプリメントを含め、飲んでいるものはすべてお知らせいただけると助かります。

弱点①|吐き気と便秘が比較的多い

国内で行われた用量設定試験では、副作用が出た方の割合は10mg群で10.3%、30mg群で14.5%、60mg群で15.2%でした。60mg群で多かったのは便秘9.8%、悪心(吐き気)3.0%です。海外の試験でも、便秘が6.9〜7.7%、悪心が4.4〜6.1%と報告されています。

ごく軽いものを含めれば、10人に1人程度は便秘を感じるとお考えいただくのが実際に近いと思います。もともと便秘がちな方は、開始前にご相談ください。水分や食物繊維の調整、必要なら下剤の併用で対応できることがほとんどです。

弱点②|発作が起きたときには使えない

アクイプタの効能・効果は「片頭痛発作の発症抑制」のみです。2026年9月現在、日本では急性期治療薬としては使用できません。添付文書にも「発現した頭痛発作を緩解する薬剤ではない」と明記されており、発作が起きたときには別に急性期治療薬を用意しておく必要があります。

この点はナルティークとの明確な違いです。

5剤をまとめて比べると

薬剤使い方発作時にも使える主な注意点
エムガルティ注射/月1回×注射部位の反応
アジョビ注射/月1回または3か月に1回×注射部位の赤み・かゆみ
アイモビーグ注射/月1回×便秘、日本では増量不可
ナルティーク飲み薬/1日おき(予防)月19日以上のデータなし
アクイプタ飲み薬/1日1回×便秘・吐き気

当面の注意|2週間ごとの通院が必要です

ここは、飲み始める前に知っておいていただきたい点です。

日本では、発売から一定期間の新しい薬について、1回の処方が原則14日分までと定められています。ナルティークもアクイプタも、現時点ではこの対象です。

アクイプタは毎日1錠なので、14日分=14錠=2週間分。ナルティークを予防で使う場合は1日おきなので、14日分=7錠で、やはり2週間分です。つまり2週間ごとの受診が必要になります。お仕事や家庭の都合で通院間隔が空きがちな方には、注射のほうが向いている場合もあります。

なお、ナルティークを発作時の頓服としてだけ使う場合は、月に数回の使用であれば7錠で数か月もつことが多く、この制限の影響はほとんどありません。

この日数制限は、発売から一定期間が過ぎれば解除されます。解除の時期については、受診時にご確認ください。

飲み薬と注射、どちらを選ぶか

「飲み薬のほうが新しいから優れている」ということはありません。それぞれに向き不向きがあります。当院では、次のような点を一緒に確認しながら決めていきます。

  • 注射に抵抗がある → 飲み薬が候補になります
  • 毎日の服薬を続ける自信がない → 月1回の注射のほうが確実です
  • 頭痛の日数が月19日以上ある → 注射のCGRP関連製剤を優先して検討します
  • 発作時に吐き気が強く、薬が飲みにくい → ナルティークのOD錠が助けになることがあります
  • もともと便秘がち → アクイプタとアイモビーグは慎重に検討します
  • 2週間ごとの通院が難しい → 当面は注射のほうが通いやすいかもしれません

効果判定の考え方は、これまでと同じです。どの薬も3か月をめどに評価します。そして、その判断材料になるのが頭痛日記です。頭痛のあった日、痛みの強さ、急性期治療薬を使った回数、生活への支障。この4つを記録しておいてください。

費用については、5剤とも保険診療で使用できます。薬価は改定されるため、実際のご負担額は受診時にご確認ください。

まとめ|シリーズを終えて

3回にわたって、片頭痛の予防治療についてご紹介してきました。

わずか数年のあいだに、注射が3種類、飲み薬が2種類。
片頭痛の治療は「痛くなったら我慢して薬を飲む」ものから、「発作が起こる日そのものを減らしていく」ものへと、大きく変わりました。そして選択肢が増えたということは、1つ目が合わなくても、次があるということでもあります。

「以前に予防薬を試したけれど効かなかった」という方も、あの頃とは状況が変わっています。もう一度ご相談いただく価値はあると思います。

片頭痛でお困りの方は、我慢を続けず、お気軽に当クリニックへご相談ください。

主な参考資料

  • ナルティークOD錠75mg 電子添文(ファイザー株式会社)
  • アクイプタ錠10mg・30mg・60mg 電子添文(アッヴィ合同会社)
  • Croop R, et al. Lancet. 2021(リメゲパントの片頭痛予防試験)
  • Ailani J, et al. N Engl J Med. 2021(アトゲパントのADVANCE試験)
  • 日本頭痛学会・日本神経学会 頭痛の診療ガイドライン2021

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個々の治療方針は診察のうえで判断いたします。

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以上、【<抗CGRP関連製剤>徹底解説シリーズ 第3回 「ゲパント製剤(ナルティーク・アクイプタ)ってご存知?」片頭痛の新しい飲み薬】でした。

『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。

引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。

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