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福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。
前回は、片頭痛の予防注射の代表格である「エムガルティ」について解説しました。まだお読みでない方は、こちらからどうぞ。
<抗CGRP関連製剤>徹底解説シリーズ 第1回「エムガルティってどんな薬?」片頭痛の予防注射をわかりやすく解説
診察室では、こんなご質問をよくいただきます。
「予防の注射は3種類あると聞きましたが、何が違うのですか?」
「どれが一番効くのですか?」
「合わなかったら、別の注射に変えられますか?」
今回は、エムガルティ以外の2剤、アジョビ(一般名:フレマネズマブ)とアイモビーグ(一般名:エレヌマブ)について、それぞれの特徴をご紹介します。3剤の違いがわかると、ご自身の生活や体質に合った選び方が見えてきます。

まずは全体像から|3剤の比較
日本で使える片頭痛の予防注射は、現在3種類です。いずれも「片頭痛発作の発症抑制」を効能・効果として承認されており、保険診療で使用できます。
| エムガルティ | アジョビ | アイモビーグ | |
|---|---|---|---|
| 一般名 | ガルカネズマブ | フレマネズマブ | エレヌマブ |
| 狙う相手 | CGRPそのもの | CGRPそのもの | CGRPの受容体 |
| 日本での用法 | 初回240mg、以降120mgを4週ごと | 225mgを4週ごと、または675mgを12週ごと | 70mgを4週ごと |
| 製剤 | オートインジェクター/シリンジ | オートインジェクター/シリンジ | ペン |
大きな分かれ目は、エムガルティとアジョビが「CGRPという物質そのもの」を捕まえに行くのに対し、アイモビーグは「CGRPが結合する受け皿(受容体)」のほうをふさぐという点です。ゴールは同じでも、経路が違います。
アジョビ(フレマネズマブ)の特徴
3か月に1回、という選択肢がある
アジョビの大きな特徴は、用法が2通りある点です。
添付文書上、
4週間に1回225mgを注射する方法と、
12週間に1回675mgを注射する方法のどちらかを選べます。
675mgは225mgの製剤を3本、続けて注射する形になります。
「毎月の通院が負担」「出張や転勤が多く、月1回のペースを守りにくい」という方にとって、3か月に1回で済む選択肢があるのは実際的なメリットです。一方で、1回に3本を打つことになるため、注射そのものの負担は増えます。どちらの方法を選ぶかは、生活のリズムと相談しながら決めていきます。
なお、4週間に1回の方法と12週間に1回の方法は、途中で切り替えることもできます。その場合、変更後の最初の注射は、変更前の次回予定日に行うこととされています。
うつ症状を合併している方についてのデータがある
片頭痛とうつ・不安は、しばしば一緒に起こります。頭痛が続くこと自体がつらさにつながりますし、気分の落ち込みが頭痛を悪化させることもあります。
この点について、アジョビにはUNITE試験という研究があります。うつ病を併存している片頭痛患者さん353名を対象に、アジョビとプラセボ(偽薬)を比較した無作為化試験で、2025年にJAMA Neurology誌に報告されました。この試験では、1か月あたりの片頭痛日数が有意に減少しただけでなく、うつ症状の評価尺度(HAM-D17)の点数も有意に改善しています。
ここで、誤解のないようにお伝えしておきたいことがあります。アジョビはうつ病の治療薬ではありません。日本で承認されている効能・効果は、あくまで「片頭痛発作の発症抑制」です。UNITE試験が示したのは、「うつ症状を合併している片頭痛の方でも、片頭痛の予防効果が確認され、あわせてうつ症状の指標も改善した」という内容です。
それでも、気分の落ち込みや不安を抱えながら頭痛に悩んでおられる方にとって、このタイプの患者さんを対象にした比較試験があること自体が、治療を選ぶうえでの一つの材料になります。
注意点:注射した場所の赤み・かゆみが比較的多い
アジョビで比較的よく見られるのが、注射部位の反応です。添付文書に記載されている国内の試験成績では、50例中17例(34.0%)に副作用がみられ、その内訳は注射部位紅斑12例(24.0%)、注射部位硬結5例(10.0%)、注射部位疼痛4例(8.0%)、注射部位そう痒感3例(6.0%)、注射部位腫脹2例(4.0%)と報告されています。
多くは数日で落ち着く軽いものですが、「毎回赤くなるのが気になる」という理由で他剤への変更を検討される方もいらっしゃいます。
打つ場所(お腹・太もも・二の腕)を毎回変える、冷やすといった工夫で軽減できることもあります。
アイモビーグ(エレヌマブ)の特徴
CGRPではなく「受け皿」をふさぐ
3剤のなかでアイモビーグだけが、CGRPの受容体に結合するタイプです。CGRPという物質そのものを減らすのではなく、CGRPが働きかける先の鍵穴をふさぐ、というイメージです。
この作用の仕方の違いが、後で述べる副作用の出方の違いにもつながっていると考えられています。
注射時の痛みが少ないという声が多い
当院で実際に使用している範囲では、アイモビーグは「打つときの痛みが少なかった」というご感想をいただくことが多い印象です。注射部位の皮疹についても、他剤と比べて気になりにくいという声をいただいています。
ただし、これは3剤を直接比較した試験の結果ではなく、当院での使用経験と患者さんのご感想に基づくものです。痛みの感じ方には個人差がありますので、あくまで参考としてお考えください。
注意点:便秘
アイモビーグで最も注意したいのが便秘です。添付文書では、1%以上の頻度でみられる副作用として便秘が挙げられており、さらに重大な副作用として、腸閉塞やイレウスなどを伴う重篤な便秘(頻度不明)が記載されています。多くは初回投与後に現れるとされています。
当院の実感としては、ごく軽いものも含めると、10人に1人程度の方が「以前より便が出にくくなった」とおっしゃる印象です。もともと便秘がちな方、腹部の手術歴がある方では、開始前にご相談ください。多くの場合は水分・食物繊維の調整や下剤の併用で対応できますが、お腹の張りや強い腹痛、便もガスも出ないといった症状が出た場合は、自己判断せず速やかにご連絡ください。
注意点:日本では1本/4週までしか使えない
日本でのアイモビーグの用法は、70mgを4週間に1回と定められています。海外では、これより高用量の使い方が認められている国もありますが、日本ではその用法は承認されていません。
そのため、頭痛の程度が強い方や体格の大きい方では、増量という手段が取れない分、効果が物足りなく感じられる可能性があります。3か月をめどに効果を判定し、十分でなければ他剤への変更を検討する、という進め方になります。
では、どう選べばよいのか
「どれが一番効くか」を事前に見分ける検査は、現時点ではありません。3剤のあいだで効果の優劣を直接比較した大規模な試験もないため、「この薬が一番よい」と言い切れるものではないのが正直なところです。
実際には、次のような点を一緒に確認しながら選んでいきます。
- 通院のペース(毎月通えるか、3か月に1回のほうが続けやすいか)
- もともと便秘がちかどうか
- 皮膚が弱く、注射部位の反応が出やすいかどうか
- 気分の落ち込みや不安を合併しているか
- 注射そのものへの抵抗感
- これまでに試した予防薬とその結果
大切なのは、1剤目が合わなくても、そこで終わりではないということです。作用の仕方が異なるアイモビーグを含め、切り替えという選択肢があります。実際、1剤目で効果が乏しかった方が、2剤目で改善するケースは珍しくありません。
効果判定のタイミングと費用
効果の判定時期は、第1回でご説明したとおりです。日本の頭痛の診療ガイドラインでは、予防療法の効果判定には少なくとも2か月を要するとされており、実際には3か月をめどに評価することが一般的です。アジョビの添付文書でも、4週間に1回投与の場合は3か月、12週間に1回投与の場合は6か月を目安に有益性を評価するよう記載されています。
3剤とも保険診療で使用でき、薬剤費はおおむね同じ水準です。ただし薬価は改定されるため、古い記事に載っている金額は当てになりません。窓口でのお支払いには診察料や注射に関する費用も加わりますので、実際の負担額は受診時にご確認ください。
そして、どの薬を使う場合でも、頭痛日記が最も頼りになります。頭痛のあった日、痛みの強さ、急性期治療薬を使った回数、生活への支障。この4つを記録しておくと、「なんとなく良い気がする」ではなく、数字で効果を確認できます。
まとめ
- アジョビは、3か月に1回という選択肢があり、うつ症状を合併する片頭痛の方を対象にした比較試験がある一方、注射部位の赤み・かゆみが比較的多く報告されています。
- アイモビーグは、3剤で唯一CGRPの受容体を標的とし、注射時の負担が少ないという声がある一方、便秘に注意が必要で、日本では増量ができません。
- どれが最適かは、生活のリズム、体質、合併している症状によって変わります。1剤目が合わなくても、切り替えという道があります。
次回は、<抗CGRP関連製剤>徹底解説シリーズ 第3回「新たに日本で使用できるゲパント製剤(ナルティーク・アクイプタ)ってご存知?」として、飲み薬のCGRP関連薬についてご紹介します。
片頭痛でお困りの方、いまの予防治療がしっくりきていない方は、我慢を続けず、お気軽に当クリニックへご相談ください。
主な参考資料
- アジョビ皮下注225mgシリンジ/オートインジェクター 電子添文(大塚製薬株式会社)
- アイモビーグ皮下注70mgペン 電子添文(アムジェン株式会社)
- Lipton RB, et al. JAMA Neurol. 2025(フレマネズマブのUNITE試験)
- 日本頭痛学会・日本神経学会 頭痛の診療ガイドライン2021
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個々の治療方針は診察のうえで判断いたします。
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以上、【<抗CGRP関連製剤>徹底解説シリーズ 第2回 「アジョビ・アイモビーグってどんな特徴?」片頭痛予防注射3剤を比較】でした。
『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。
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