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福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。
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1. RSウイルスとは?
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus:RSV)は、乳幼児から高齢者まで幅広い世代に感染する呼吸器ウイルスです。
• 初感染は乳幼児期に起こることが多い
生後6か月以内に初めて感染する子どもも多く、ほとんどの人が2歳までに一度は感染します。
• 症状
鼻水・咳・発熱などの軽い風邪症状で済むこともあれば、気管支炎や肺炎に進行し、呼吸困難をきたすこともあります。
• 重症化のリスク群
・乳幼児(特に生後6か月未満)
・早産児、心疾患・肺疾患を持つ小児
・高齢者や基礎疾患を持つ成人
RSウイルスは非常に感染力が強く、飛沫感染・接触感染を中心に家庭内や施設内で一気に拡がる傾向があります。
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2. 2025年9月の流行状況
• 厚労省の感染症発生動向調査(IDWR)によると、2025年第9週のRSウイルス報告数は 3,984例。
• 年齢分布では 3歳以下が88%以上、5歳以下が95%以上 を占め、乳幼児が主な感染者層です。
• 例年は秋冬にピークを迎えるRSウイルスですが、2025年は 夏〜秋にかけてすでに高い水準の報告数 が記録されています。
• 各自治体の報告でも、愛媛県・三重県・兵庫県などで9月時点で「流行期レベル」に入っているとの発表があり、今年は秋の段階で全国的に流行が広がり始めていると考えられます。
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3. 流行パターンの変化:新型コロナ以降の不定期流行
かつてRSウイルスは「冬の流行ウイルス」と認識されていました。
ところが、新型コロナ流行後からは流行時期がずれ込み、不定期化 しています。
背景と理由
• コロナ禍のマスク・手洗い徹底により、RSウイルスを含む多くの呼吸器ウイルスの流行が一時的に抑え込まれました。
• その反動で、免疫を持たない乳幼児や、しばらく感染機会がなかった世代で感受性が高まり、シーズン外に突発的流行 を起こすようになったと考えられています。
• このため、保護者や医療機関は「冬だけ注意すればいい」という従来の認識を改め、年間を通じて警戒する必要が出てきました。
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4. 感染の広がり方と「子ども → 大人」への波及
• RSウイルスはまず 保育園・幼稚園などの乳幼児集団で流行 します。
• そこから兄弟姉妹・保護者へと感染が広がり、家庭内で連鎖的に感染するのが典型的です。
• 臨床現場では「子どもに流行した後、1か月程度遅れて大人の感染が目立つ」ケースが見られるとの報告もあります。
大人のRSウイルス感染は「ただの風邪」と思われやすいのですが、咳が長引くことが多く、基礎疾患を持つ高齢者では肺炎に進展することがあります。
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5. 有効な治療法がないという現実
現在、RSウイルスに対する「特効薬」は存在しません。
治療は 対症療法が中心です。
• 水分・栄養管理
• 発熱に対する解熱剤
• 酸素投与、呼吸管理(重症例)
• 必要に応じて入院管理
かつては乳幼児のハイリスク児に対し「パリビズマブ」という抗体製剤を投与して発症予防を行うケースがありましたが、広く使える治療薬ではなく、一般的には 感染予防と早期発見 が重要になります。
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6. 高齢者の重症化リスク
RSウイルスは「子どもの病気」というイメージが強いですが、実際には 高齢者でもインフルエンザと同等かそれ以上の重症化リスク が指摘されています。
• 高齢者施設では集団感染が起きやすく、肺炎や呼吸不全の原因となります。
• 心疾患・糖尿病・慢性呼吸器疾患を持つ方は特に注意が必要です。
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7. ワクチン「アレックスビー(Arexvy)」の登場
従来、RSウイルスに対しては乳幼児の一部を除き予防手段がほとんどありませんでした。
しかし近年、高齢者を対象としたRSウイルスワクチン「アレックスビー」 が登場しました。
特徴
• 接種対象:60歳以上のすべての方、および 50〜59歳で基礎疾患がある方
• 接種回数:1回(筋肉内注射)
• 有効性:
・60歳以上でRSウイルス関連下気道疾患を 82.6%予防(6〜7か月追跡)
・重症型では 94%予防 との報告もあり
・3シーズン追跡の長期試験では 62.9%(下気道疾患)、67.4%(重症例) の累積予防効果
安全性と注意点
• 注射部位の痛み・腫れ、発熱、倦怠感などの一過性副反応が中心。
• 接種費用は自費で2〜3万円台が目安(医療機関によって差あり)。
• 現時点では追加接種(ブースター)の必要性は明確になっていません。
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8. 日常でできる予防策
ワクチンが登場したとはいえ、感染予防の基本はやはり 日常生活での工夫 です。
• 手洗い・うがい・マスク着用
• 家庭内でのタオル・食器の共用を避ける
• こまめな換気と加湿
• おもちゃやドアノブなどの定期的な消毒
• 症状があるときは登園・登校・出勤を控える
特に乳幼児と高齢者が同居する家庭では、子どもからの持ち込み感染を防ぐ工夫 が重要です。
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まとめ
• 2025年9月現在、RSウイルスは全国的に例年より早く流行しており、乳幼児を中心に患者数が増加しています。
• 新型コロナ以降は流行時期が不定期化しており、年間を通じた警戒が必要です。
• 有効な治療薬はなく、乳幼児や高齢者では重症化リスクが高いため、予防が最重要です。
• 高齢者には「アレックスビー」という新しいワクチンが導入されており、重症化予防に期待されています。
「子どもの風邪」と思われがちなRSウイルスですが、実は 全年齢で注意すべき感染症 です。家庭・地域で感染対策を徹底し、必要に応じてワクチンの利用も検討していきましょう。
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以上、【2025年秋のRSウイルス流行 ── 子どもから高齢者まで注意すべき理由と最新対策
のご案内】でした。
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