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<抗CGRP関連製剤>徹底解説シリーズ 第1回「エムガルティってどんな薬?」片頭痛の予防注射をわかりやすく解説

健康コラム

日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。

「片頭痛が起こるたびに薬を飲んでいる」
「頭痛のせいで仕事や家事ができない日がある」
「いつ頭痛が起こるか不安で、予定を立てにくい」

片頭痛は、単に「頭が痛い」というだけの病気ではありません。仕事や学校を休んだり、家事や育児ができなくなったり、楽しみにしていた予定をキャンセルしたり……。片頭痛によって、日常生活そのものが大きく制限されてしまう方も少なくありません。
これまで片頭痛治療というと、「頭痛が起こったら薬を飲む」というイメージを持っている方も多かったと思います。しかし現在は、「片頭痛が起きてから対処する」だけではなく、「片頭痛が起こる日そのものを減らす」ための予防治療(発症抑制治療)も大きく進歩しています。

その代表的な治療薬のひとつが、今回ご紹介する「エムガルティ」です。

エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)は、片頭痛の病態に深く関わる「CGRP」を標的とした抗CGRP抗体薬で、日本では「片頭痛発作の発症抑制」のために使用されています。

今回は、「エムガルティってどんな薬?」「どのくらい効果があるの?」「毎月注射するの?」「副作用は?」「いつまで続けるの?」といった疑問について、できるだけわかりやすく解説します。

■ そもそも「CGRP」って何?
エムガルティを知るうえで、まず理解しておきたいのが「CGRP」です。
CGRPとは「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」という神経ペプチドです。
少し難しい名前ですが、片頭痛では三叉神経系などを介してCGRPが放出され、痛みの伝達などに重要な役割を果たすことがわかってきました。
エムガルティは、この「CGRPそのもの」に結合することで、その働きを抑える薬です。
つまり、片頭痛の病態に関係する仕組みをターゲットとして開発された薬なのです。日本頭痛学会でも、CGRPと片頭痛の病態、抗CGRP抗体による予防治療についてガイドラインが設けられています。

■ 従来の予防薬とは何が違うの?
ここもエムガルティを理解するうえで重要なポイントです。
片頭痛の予防には以前から、
・β遮断薬
・抗てんかん薬
・抗うつ薬
・カルシウム拮抗薬 などが使用されてきました。

これらには片頭痛以外の疾患にも使用される薬があります。
一方、CGRP関連抗体薬は、片頭痛の病態で重要なCGRPまたはその受容体を標的として開発された治療薬です。
そのため、片頭痛の予防治療に新しい選択肢が加わったことは、大きな変化でした。

■ エムガルティは「頭痛が起きたときに打つ注射」ではありません
「頭が痛くなったらエムガルティを打つの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
エムガルティは、頭痛が起きたときにその場で痛みを抑えるための急性期治療薬ではありません。
日本で承認されている効能・効果は、「片頭痛発作の発症抑制」です。
つまり、「頭痛が起きた → 薬で抑える」だけではなく、「そもそも片頭痛に悩まされる日を減らしていく」ことを目的とした治療です。

■ エムガルティって、実際どのくらい効くの?
患者さんが一番気になるところではないでしょうか。
日本人の反復性片頭痛患者さんを対象とした国内第Ⅱ相試験(CGAN試験)では、エムガルティ120mgを使用したグループで、1か月あたりの片頭痛日数が6か月平均で3.6日減少しました。
プラセボ群では0.6日の減少であり、統計学的に有意な差が認められています。
さらに6か月平均では、
片頭痛日数が50%以上減った方→ 49.8%
片頭痛日数が75%以上減った方→ 25.5%
片頭痛日数が100%減った方→ 9.0%   という結果でした。

つまり、臨床試験では「約半数の患者さんで片頭痛日数が半分以上になった」という結果が示されています。
一方で、とても大切なのは、「全員の片頭痛が半分になる」「注射をすれば必ず頭痛がなくなる」という意味ではないことです。効果には個人差があります。

■ 効果はいつから感じる?
エムガルティの特徴のひとつとして、比較的早い段階から効果が確認されたことがあります。
国内CGAN試験では、投与1か月目から片頭痛日数の減少が確認され、効果は6か月の試験期間を通じて認められました。ただし、「1回打ったのに頭痛があるから効いていない」とすぐに判断するものではありません。

日本では、3ヶ月目に最終的な効果判定を行うのが一般的です。
日本の頭痛の診療ガイドライン2021では、
「片頭痛予防療法の効果判定には少なくとも2ヵ月を要する。有効性を確認したうえで、有害事象がなければ少なくとも3ヵ月、忍容性が良好であれば6~12ヵ月は予防療法を継続する。片頭痛のコントロールが良好になれば予防薬を緩徐に減量し 、可能であれば中止する。」と記載されています。
また、論文によっては、ウルトラレイトレスポンダー(Ultra-late responder)といって、片頭痛の予防薬である抗CGRP24週間(約6ヶ月)を超えてからようやく効果(片頭痛日数が50%以上減少)が現れ始める患者の報告もあります。 (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38231271/), [2] (https://www.iris.unicampus.it/handle/20.500.12610/86124)近年のリアルワールドデータ(実臨床データ)に基づく学術論文(代表例:Barbantiらの前向き観察研究など)によってその存在が明確に定義され、頭痛診療の現場で注目されています。

抗CGRP関連抗体製剤に対する治療反応(レスポンス)の時期は、以下のように分類されます。 (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38231271/), (https://www.iris.unicampus.it/handle/20.500.12610/86124)
・標準的レスポンダー(Responders): 12週間(3ヶ月)以内に効果が出る(約60%)
・レイトレスポンダー(Late responders): 13〜24週間(3〜6ヶ月)の間に効果が出る(約15%)
・ウルトラレイトレスポンダー(Ultra-late responders): 24週間(6ヶ月)以降に効果が出る(約15%)
・ノンレスポンダー(True Non-responders): 48週間(1年)投与しても効果が出ない(約8.7%)

👤 ウルトラレイトレスポンダーの特徴
早期に効果が出る患者と比較して、ウルトラレイトレスポンダーに分類される患者には以下のような臨床的特徴が多く見られることが分かっています。 (https://link.springer.com/article/10.1007/s00415-023-12103-4), (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38231271/)
・高いBMI(肥満傾向)
・薬剤の使用過多(薬物乱用頭痛:Medication Overuse)の期間が長い
・多くの身体的・精神的併存疾患(うつ病や不安障害など)を抱えている
慢性片頭痛や難治性の頭痛の歴史が長い

片頭痛が高度に慢性化している、あるいは中枢性感作(脳が痛みに過敏になっている状態)が進んでいる患者では、CGRPの働きをブロックしてから脳の過敏性がリセットされるまでに長い時間がかかることが原因と考えられています。

この実臨床のデータでいけば、
『1年間抗CGRP関連製剤を続ければ、20人中18-19人では効果がある』
と言い換えることもできるかもしれません。
(実際の臨床現場では、臨床試験と異なり、従来の経口予防を複数併用で使用することが可能ですから、治療効果が高くなると思われます。当院の経験上も、同様の結果です。)

効果の現れ方には個人差がありますので、頭痛日記などを使いながら、
「頭痛の日数」
「痛みの強さ」
「急性期治療薬を使った回数」
「生活への支障」 などを継続して確認することが大切です。

■ エムガルティはどうやって使う?
エムガルティは皮下注射する薬です。1本にガルカネズマブ120mgが含まれており、
初回→ 120mgを2本(合計240mg)
2か月目以降→ 120mgを1本、1か月間隔  で投与します。

初回に2本使用することで、治療開始時から必要な薬物濃度に速やかに到達させる設計になっています。
製剤には、「オートインジェクター」「シリンジ」があります。PMDAにも両製剤の情報が掲載されています。

また、エムガルティは一定の条件のもとで在宅自己注射を行うことも可能です。

自己注射を希望される場合は、医師や医療スタッフから正しい使用方法について十分な指導を受ける必要があります。日本頭痛学会でも、ガルカネズマブの在宅自己注射について独立した項目が設けられています。

■ どんな人が予防治療を考えた方がいい?
「片頭痛があれば、全員エムガルティを使う」というわけではありません。
まず大切なのは、本当に片頭痛なのかを正しく診断することです。そのうえで、
「頭痛の頻度はどのくらいか」
「仕事や学校を休むほどなのか」
「家事や育児に支障があるか」
「急性期治療薬で十分にコントロールできているか」
「これまでの予防治療はどうだったか」   などを総合的に評価します。

従来は既存の予防薬を使用しても効果が不十分、または副作用などで使用できない場合などにCGRP関連抗体薬が検討されてきました。
しかし、片頭痛予防治療を取り巻く考え方も変化しています。
日本頭痛学会は2025年10月に「片頭痛予防療法におけるCGRP関連抗体薬の使用に関するポジションステートメント」を公表しました。

そこでは、海外ガイドラインでCGRP関連薬が予防療法の第一選択肢に位置づけられている動向なども踏まえ、日本でも患者さんの病状、生活への支障、費用などを考慮しながら治療を選択していく考え方が示されています。

そのため、「何種類かの薬を試さないと絶対に使えない」と一律に考えるのではなく、ご自身の状態について頭痛診療に詳しい医師へ相談することが大切です。

■ 副作用は?
エムガルティで比較的注意したいのが、注射した場所に起こる反応です。
注射した部分に、 
・赤み
・痛み
・腫れ
・かゆみ などがみられることがあります。
また、頻度は高くありませんが、アナフィラキシー、血管浮腫、蕁麻疹などの重篤な過敏症にも注意が必要です。
注射後にいつもと違う症状が現れた場合には、自己判断せず医療機関へ相談してください。

■ エムガルティはいつまで続けるの?
「一度始めたら、一生注射し続けるの?」という質問もよくあります。
エムガルティは「一度始めたら一生続けなければならない薬」ではありません。
治療中は、
・片頭痛日数
・頭痛の強さ
・急性期治療薬の使用日数
・仕事や学校への影響
・家事や育児への影響
・副作用
・治療費 などを確認しながら、継続するメリットを評価していきます。

症状が十分改善し、日常生活への支障が少なくなった場合には、治療を休止できるか検討することもあります。
反対に、休止後に片頭痛が再び増えた場合には、再開を検討することもあります。
日本頭痛学会でも「CGRP関連抗体薬の休止や再開について」のエキスパートオピニオンが公開されています。

■ 治療効果を見るなら「頭痛日記」がおすすめ
エムガルティを始める前後では、頭痛日記をつけることをおすすめします。
記録してほしいのは、
・頭痛があった日
・片頭痛だった日
・痛みの強さ
・薬を飲んだ日
・薬が効いたか
・仕事や学校を休んだか
・日常生活にどのくらい影響したか  などです。

「なんとなく最近調子がいい」だけではなく、 
「治療前は月10日あった片頭痛が、月4日になった」
というように変化を把握できるため、治療を続けるかどうかを判断するうえでも役立ちます。

■ 気になる「費用」は?
エムガルティは保険診療で使用できます。
薬価は改定されるため、古い記事に掲載されている金額には注意が必要です。
厚生労働省の2025年8月時点の薬価資料では、

エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター→ 1キット 42,638円
エムガルティ皮下注120mgシリンジ→ 1筒 42,451円  とされています。

単純に薬剤費だけを3割負担で計算すると、オートインジェクターの場合、
初回2本→ 約25,600円
2か月目以降1本→ 約12,800円  が目安になります。

ただし、これは薬剤費のみの概算です。

実際の窓口負担額には診察料、注射に関する費用などが加わる場合があり、自己注射か院内投与かなどによっても異なります。
また、薬価改定などによって金額は変わるため、実際の費用については受診時にご確認ください。

■ 「頭痛を我慢する」だけではない時代へ
片頭痛患者さんのつらさは、「1か月に何日頭が痛いか」という数字だけでは表せません。
「頭痛で仕事を休んでしまう」
「痛くて子どもと遊べない」
「休日なのに一日寝込んでしまう」
「旅行の日に頭痛が起きないか心配」
「友人との約束を入れるのが怖い」

そして、「また頭痛が来るかもしれない」という不安を抱えながら毎日を過ごしている方もいます。
片頭痛治療の目標は、単に痛みの数字を小さくすることだけではありません。
片頭痛によって失われていた「いつもの生活」を少しでも取り戻すことも、大切な治療目標です。
エムガルティをはじめとしたCGRP関連抗体薬によって、片頭痛の予防治療には新しい選択肢が加わりました。

■ そして、CGRP治療はさらに進化しています
エムガルティが日本で登場した2021年以降、CGRPをターゲットとした治療の選択肢はさらに広がっています。
現在は注射薬として、
エムガルティ(ガルカネズマブ)
アジョビ(フレマネズマブ)
アイモビーグ(エレヌマブ) が使用されています。

さらに、2025〜2026年には内服するCGRP受容体拮抗薬「ゲパント」も日本の片頭痛治療に加わりました。
ナルティーク(リメゲパント)は「片頭痛発作の急性期治療及び発症抑制」、アクイプタ(アトゲパント)は「片頭痛発作の発症抑制」として承認されています。
つまり、片頭痛治療は「注射だけ」ではなく、さらに選択肢が広がってきています。

次回は、<抗CGRP関連製剤>徹底解説シリーズ 第2回
「アジョビ・アイモビーグは何が違う?3つの片頭痛予防注射を比較」
として、エムガルティとの違いも含めて詳しくご紹介します。

■ まとめ
エムガルティは、片頭痛の病態に深く関わるCGRPをターゲットにした、片頭痛発作の発症抑制薬です。
「頭痛が起きたら薬を飲む」という治療だけではなく、「片頭痛が起こる日そのものを減らす」という治療の選択肢があります。

「毎月何度も片頭痛がある」
「頭痛で仕事や家事に支障が出ている」
「急性期治療薬を使う回数が増えてきた」
「片頭痛のせいで予定を諦めることが多い」

そんな方は、一度予防治療について考えてみてもよいかもしれません。
エムガルティがご自身に適した治療なのか、ほかの予防薬が適しているのかは、頭痛の頻度や症状、これまでの治療歴などによって異なります。

片頭痛でお困りの方は、我慢を続けず、お気軽に当クリニックへご相談ください。

PMDA エムガルティ医薬品情報⁠
日本頭痛学会 CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン⁠
日本頭痛学会 2025年CGRP関連抗体薬ポジションステートメント⁠

診察のご予約はこちらから🌿

https://patient.digikar-smart.jp/institutions/626d04ef-a5e9-49cf-bb68-8a2644ee4661/reserve

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以上、【<抗CGRP関連製剤>徹底解説シリーズ 第1回「エムガルティってどんな薬?」片頭痛の予防注射をわかりやすく解説】でした。

『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。

引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。

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