日頃より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。
福岡天神頭痛と肺のクリニックでございます。
【はじめに】
2024年1月頃に発症した30代の妊婦の方がオウム病に罹患後にご逝去されたことを受け、当院では改めてオウム病の最新知見と予防・治療情報をまとめました。正しい知識を持って安全に鳥類と接していただく一助となれば幸いです。
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- ニュースの概要
長崎県によりますと、2024年1月に県内の医療機関を受診した30代の妊婦が、発熱や呼吸困難、意識障害などを発症し、その後、亡くなりました(NHK長崎ローカルニュース 2025年6月12日配信) 。
同県は、妊婦の検体からオウム病の病原体「クラミジア・シッタキ(Chlamydia psittaci)」の遺伝子を確認し、「オウム病による死亡の疑いがある」と発表しています(長崎県発表資料) 。
国内で妊婦がオウム病で亡くなる事例は極めて稀であり、特に免疫が低下しやすい妊婦での重症化リスクに警鐘が鳴らされました。
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2. オウム病(Psittacosis)の概念
2.1 定義と病原体
オウム病(Psittacosis)は、**クラミジア・シッタキ(Chlamydia psittaci)**というグラム陰性の細胞内寄生菌による人獣共通感染症です 。
主にオウムやインコ、ハトなどの鳥類を保有・飼育する中で、感染鳥の排泄物や羽毛汚染物を乾燥させた粉塵を吸入することで人に伝播します 。
人から人への伝染は極めてまれとされ、家禽業者やペットブリーダー、愛鳥家を中心に発症例が報告されています。
2.2 臨床症状と経過
潜伏期間は一般に1~2週間で、急性に発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などインフルエンザ様症状を呈します 。
その後、乾性咳嗽や胸部不快感が現れ、進行例では**肺炎像(非定型肺炎)**を呈し、場合によっては呼吸困難や意識障害を来たします 。
日本国内の年間発症者数は20~30例程度と希少ですが、死亡例も報告されており、特に高齢者や妊婦、免疫不全者で重症化リスクが高いとされています 。
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3. 注意喚起
• 妊婦・高齢者・免疫低下者は要注意
妊婦は免疫機構の変化により重症化しやすく、胎児死亡例も報告されています 。
• 鳥類との濃厚接触を避ける
鳥への口移し給餌や掃除時の粉塵吸入はリスク大。ケージ内の羽毛・糞をこまめに掃除し、乾燥防止のため湿らせて除去してください 。
• マスク・手洗い・うがいの徹底
掃除後はマスク・手袋着用の上、終了後は十分な手洗い・うがいを行い、顔面の粉塵吸入を防ぎましょう 。
• 症状発現時の速やかな受診
発熱や呼吸器症状発現後は、必ず鳥類との接触歴を医師に伝え、オウム病を念頭に診察・検査を受けてください 。
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4. 治療法 - 抗菌薬レジメン詳細
4.1 基本方針
• 第一選択:テトラサイクリン系抗菌薬(主にドキシサイクリン)
• 第二選択:マクロライド系抗菌薬(マクロライドが第一選択となる場合もあり)
• 代替選択:ニューキノロン系抗菌薬やその他(禁忌・耐性例など)
治療は早期開始が重症化防止の鍵で、診断疑い時点で抗菌薬投与を開始することが推奨されます 。
4.2 テトラサイクリン系
ドキシサイクリン(Doxycycline)
• 成人経口
• 初日:ドキシサイクリン塩酸塩水和物 200 mg(基準量)を1回または2回に分割投与
• 2日目以降:100 mgを1日1回経口投与
• 投与期間:10~14日間(症状消失後も計14日間は継続)
• 成人静注
• ドキシサイクリンヒyclate 4.4 mg/kg/日(最大100 mg/回)を2回分割で点滴静注
• 重症例・吸入酸素管理例で推奨
• 小児(8歳以上)
• 2.2 mg/kgを1日2回(最大100 mg/回)経口投与、5~14日間継続(年齢・症状に応じ調整)
• 禁忌:妊婦・幼若児(歯牙形成期)では避け、マクロライド系を選択 。
4.3 マクロライド系
エリスロマイシン(Erythromycin)
• 成人経口:エリスロマイシン塩酸塩 250 mgを1日4回(6時間毎)投与、10~14日間
• 小児・妊婦:40~50 mg/kg/日を分3~4回、計10~14日間投与
アジスロマイシン(Azithromycin)
• 静注レジメン
1. 初期:10 mg/kg(最大500 mg)を24時間毎に2日間点滴
2. 続いて経口:5 mg/kg/日(最大250 mg)を3日間投与
• 経口レジメン(簡便式)
• 500 mgを1日1回、3日間投与(一般的なZパック様式)
• 妊婦:マクロライドが第一選択。アジスロマイシン安全性高 。
クラリスロマイシン(Clarithromycin)
• 成人経口:200 mgを1日2回、計400 mg/日を10~14日間投与 。
4.4 ニューキノロン系
レボフロキサシン(Levofloxacin)
• 成人経口/静注:500 mgを1日1回、7~14日間投与
• 代替選択:テトラサイクリン・マクロライド禁忌例や耐性例、重症例で検討。
4.5 その他の選択肢
• クロラムフェニコール:第3選択(米国でまれに使用、重篤副作用に注意) 。
• 併用療法:重症例でドキシサイクリン+マクロライド、または抗菌薬+サポート治療(酸素投与、輸液、ICU管理など)。
4.6 治療中のモニタリングと支持療法
• 体温・呼吸状態:1日複数回観察
• 血液検査:CRP、白血球、肝腎機能を週1回程度
• 画像検査:胸部X線・CTを1~2週間おきに実施し、肺炎改善を確認
• 支持療法:酸素投与、点滴補液、重症例では人工呼吸管理やECMOも検討 。
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5. ご冥福をお祈り申し上げます
このたび尊い命を奪われた妊婦の方のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。ご遺族の皆さまには深い哀悼の意を表するとともに、関係者の皆さまへお見舞いを申し上げます。当院では、今後もオウム病を含むあらゆる感染症の予防・早期発見・適切治療に全力を尽くしてまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いします。
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参考文献・情報源
1. Medscape: Psittacosis (Parrot Fever) Treatment & Management
2. CDC: Clinical Overview of Psittacosis
3. NSW Health: Psittacosis Control Guideline
4. BMJ Best Practice: Psittacosis – Symptoms, diagnosis and treatment
5. WHO/各種臨床研究論文など日本語ガイドライン
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※本記事の内容は2025年6月時点の情報に基づいています。最新の知見・ガイドラインに応じて適宜更新いたします。
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以上、【オウム病の重症化について のご案内】でした。
『福岡に医療で貢献する』ことを目標に、患者様へより良いサービスを提供できるように日々精進してまいります。
引き続き、福岡天神頭痛と肺のクリニックをどうぞよろしくお願いいたします。